探偵たちと!
□道案内を頼まれる
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※エセ関西弁注意
『いやーありがとうな兄ちゃん!ホンマ助かったわー』
「ど、どういたしまして…?」
めんどくさそうなものには関わらないぞと、そう決意した矢先にこれである。
まだまだ肌寒い下校中、突如話しかけてきたのは、ともすれば吹奏楽部と間違われそうな野球帽をツバを後ろに被った色黒の青年。
こいつ俺たちと同じ学年だったと思うんだが。
学校どうしたんだろ…
『兄ちゃんその制服、帝丹の生徒やんなぁ。工藤新一とおんなじ』
最初からコッテコテの関西弁で話しかけられると、初対面の人間は恐怖でしかないんだが。
彼が“彼”であったことがまだ救いだ。
ついノリでせやなと返しそうになるのを何とか押し留め、どうしたんですかと返す。
服部平次と名乗った彼は挨拶代わりに足の運びが云々筋肉の付きかたが云々と俺が空手部であることを推理し、答え合わせが済んでやっと、ちょお道教えてぇな、と本題をきりだした。
そしてあれよあれよと言う間に案内させられたのは毛利探偵事務所、正確には“工藤といっちゃん仲ええやつの家”だったってわけだ。
新一にどうしても会いたかったらしい。
道すがら話を聞いていると、今の服部平次は新一に対抗心メラメラし過ぎなのが伝わってきて正直気持ち悪かった。
少年誌のバトルもので初期に出てくる主人公のライバルみたいな……そういや服部はライバルポジだったっけ。
最後にあっちで観たときはけっこう仲良さげだった気がすんだけどな…
「あ、着きましたよ」
『おーここか!』
そして冒頭にもどる。
「よかったんスか、工藤本人の家じゃなくて」
『俺も最初は工藤ん家行こうと思たんやけど、近所で聴き込みしたらどーも近頃誰も帰って来てへんらしい。こら何や、けったいな事件に首突っ込んで、身を隠すために誰かに匿ってもろとるんとちゃうか?と思て、手始めに工藤といっちゃん仲良い奴の家に突撃したろやないかちゅうわけや』
「…へー」
バレてるぞ新一。
え、探偵の行動力こわ…
どうしよう…勢いで連れてきちまったけど、やっぱりまだ会わせるべきじゃなかったとか?
ふたりの馴れ初めってどんな感じだったんだろう。
紆余曲折を経るのか?
それとも最初から共闘するとか?
今さら帰れなんて言えないし…
『あれ、そこで何してんの那前。うちに用事?』
蘭ちゃん家から出てきちゃったし…
「アー、ウン。用事があるのは俺じゃなくて、俺の隣にいる人なんだけど…」
おいやめろ服部平次。
俺にだけ聞こえるような声で『いっちゃん仲良い奴て、あの姉ちゃんかいな。もしかして工藤のコレか?』って言いながら小指立てんな。
へし折るぞ。
今の蘭ちゃんに聞こえたらお前もっと大変なことになるからな。
胃に穴開く(物理)からな。
いやわりとマジで
「服部さん、頼むから大人しく…」
『姉ちゃんが工藤のオンナやな?ちょお邪魔さしてもらうで』
言いながら帽子のツバを前に直した服部平次は、俺を無視してドカドカと事務所への階段を上っていった。
どうしてこの世界の人間はこうも人の話を聞かないんだろう。
『おん…はぁ!?ちょっと!那前!説明しなさいよ!』
そして何故か俺に蘭ちゃんの矛が向けられた。
ごめんね蘭ちゃん
一から説明したいのはやまやまなんだけど、これ以上関わりたくないって俺の心がさっきから訴えてる気がするんだわ。
「大丈夫!説明はそこの服部さんが多分ちゃんとしてくれるから!じゃあ俺帰るな!」
『ちょっと那前』
「じゃあね!」
蘭ちゃんの制止の声もきかず、俺は逃げるように走り去った。
罪悪感はあるにはあるが、まぁなんとかなるだろう。
蘭ちゃんの説教は学校で聞くとして…
「頑張れ!コナンくん」
途中、マスクにランドセル姿の、恐らく帰宅後凄まじい心労を負うであろう彼を見つけたので、すれ違いざまにごめんの意味も込めて声をかけておいた。
『へ?……くしょん!』
声に気づいて振り向いた時にはもう小さくなっていた、銀色の彼の言葉の意味をコナンが知るのは数分後のことである。
翌朝、思っていたより怒られなかった。
よくわかんないけど、ラッキー?
『(那前が服部くんを連れてきたから新一が駆けつけてくれたわけだし…で、でも那前が連れてきた服部くんのせいでコナンくんの風邪が変なことになっちゃったのも事実?…えぇでも…)』
蘭ちゃんがそんなことを考えているなんて俺は知る由もなかった。