探偵たちと!

□デパートに呼び出される
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―――――『那前って小さい男の子の趣味ってわかる?「は?」実はしばらく知り合いの子預かることになっちゃって…いろいろ揃えなきゃいけないじゃない、パジャマとかコップとか。「はぁ…」やっぱりそういうのって男の子同士のほうが気軽でいいかなって、新一は連絡寄越さないし「ちょっ」じゃあ日曜日に米花デパートね。ばいばい』―――――

彼女との電話での会話はこれですべてだ。
なんだかデジャビュ。
俺の知り合いって話聞かないやつ多すぎだろ。
まぁ行くけどな。
暇だもん。
というより、小さい男の子って、あいつだよな。
あいつしかいないよな。


その日デパートまで行くと、入り口で待っていたのは蘭ちゃん。
それと、彼女と手を繋いでいた、彼だった。
あ、こいつ今俺のこと目付き悪すぎるだろ……って思ってるな。
若干顔が引き攣ってる。
俺は傷ついた。

『ぼ、僕、江戸川コナン!』

うん、知ってるよ。という言葉は呑み込んで、しゃがみこみ彼と目線を合わせる。
チビッ子と話すときは目線を低くしろとは、他ならぬ新一からのアドバイスだった。



「……妙地那前だ。“はじめまして、コナン君”」


―――――――


「…コナンくん、好きな色ってある?」
『え?えっと、あ、青系かな!』

じゃあ私別の階で買わなきゃいけないものあるから、あとは任せたわね!
そう言って、蘭ちゃんは俺たちふたりを衣類フロアに残し颯爽とエレベーターに乗っていった。
どうやら俺の本当の役目は、江戸川コナンくんの荷物持ちだったらしい。
やばい、帰りたい。

「そうか…じゃあこの辺かな」
『えーどれにしよっかなー』

無邪気を装って子供用パジャマを選ぶ彼を、選ぶ手伝いをしつつ観察してみる。
めっちゃ小さい。
少々服装が気になるが、喋った感じは小生意気なガキ、という印象しか与えない。
さすが女優の愛息子。
こどもの演技は俺より上手い。
だが残念だったな新一、6才児はまだ『系』なんて使わないんだぞ。
改善の余地ありってな……

(ま、教えてやらんがな!)



コナンくんから視線をそらし、子供用のパジャマを2着手に取る。
傍目にはパジャマを選んでいるようにしか見えないが、考えてることは別のこと。
俺のこれからの身の振り方についてだ。

いや、悩んでるってわけじゃないぞ。
俺はコナン=新一については知らないふりをしようって決めてたし。
俺は気づいたんだ。
俺がそんな情報知っていたところで、くその役にも立たない。
せやかて工藤!の彼らのような推理の手伝いはできないし、博士みたいなビックリどっきりメカも作れない。
ぶっちゃけ武力交渉要員だってこの世界にはたくさんいるし、俺いなくたって問題なくね?みたいな。

ただし本人から打ち明けられた場合はその限りでない。
当たり前だ。
まぁ、そんなことないとは思うが。


俺が考えてることはそれじゃない。
もっとちまっこいことだ。
ほら、俺新一と仲良しじゃん?…仲良しなんだよ。
だから弁当もB組まで行って新一と食べてたわけよ。
そしてその新一は小学校に編入してしまった。
つまりそう言うことだ。

「(ボッチ飯、どう回避しよ……)」

な、ちまっこいだろ?


『ねぇねぇ那前兄ちゃん』

「(兄ちゃん……)ん?決まったのか?」

俺がしょうもないことを考えている間にコナンくんはパジャマを選び終わっていた。
早い。
まだ何も策が浮かんでないのに。

『うん、僕これにするね!』

「おう…シンプルだな。いいのか?仮面ヤイバーじゃなくて」

『い、いいの!僕これがいい!』

コナンくんが手にしていたパジャマは白のボタンがついた水色の無地だった。
チッ、つまらん。


―――――――――


そのまま何の事件も起こらずにみんなのショッピングは終了した。
めでたい。

『ありがとね那前。今日助かったわ』
『ありがとう、那前兄ちゃん!』

両手を紙袋でふさがれつつもふたりを毛利探偵事務所まで送り届け、玄関先でやっと荷物を蘭ちゃんに渡した。
重かった。
帰ったら寝よ。

『あ、ねぇ那前兄ちゃん。僕聞きたいことがあるんだけど…』

帰ろうとしたところで、ちょいちょい、と袖を引っ張られる。
ん?俺、何かこいつのレーダーに引っ掛かるようなことしたっけな…?
耳貸して!と言われたのでしゃがんで耳を傾ける。

『那前兄ちゃん、知り合いに兄ちゃんと見た目が似てる人いない?』
「えぇ?強いて言えば父方のじいさんかな…どうしてそんなこと?」
『…ううん!なんでもない!』
「……そうか」



じゃあね、ばいばい、と手を振り彼らとわかれ、帰路につきながらさっきの質問の意味を考えた。
新一はあんな質問したことなかったし。
俺の特徴と言えば、長身、白髪、目付きの悪さ……

いや、まさかな!

まさかそんな…

ははは…

や、でも時期的にはピッタリ……

え、マジで疑われてんの?

「…笑えねー」

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