探偵たちと!
□後編
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【ささやかなる日常たち】
『へぇ、旅行先でそんなことが有ったんですか…大変でしたね。』
「そう、チョー大変だったの。あ、これお土産ね。」
『俺に?いいんですか?ありがとうございます。(…メトロポリタンミュージアム?)』
もうしばらくは旅行はいいや、と思うほどに濃いアメリカ旅行から数日後
無事日本に帰還した俺は、この世界でできた数少ない友人のひとりである彼を、ニューヨーク土産を片手に訪ねていた。
気に入ってくれるといいな、“俺的メトロポリタンミュージアム厳選詰め合わせ”。
彼との出会いはまさしく偶然の蓄積と言うか、身体的に同年代とはいえ学校も出身地も違うのに、基本贔屓のスポーツ用品店は丸被るは、ランニングでちょくちょくすれ違うは、はては洋服屋でかち合うこと数知れず、もうこれは運命的ななにかではないかとある日意を決して話しかけてみれば相手もかねてから同じ思いだったようで、打ち解けるのは早かった。
どれくらい打ち解けたかと聞かれると、そうだな、この前コンビニでばったり会った時ラスイチのあんまんを半分こするくらいには仲良くなったぞ。
ちなみに新一の場合は割り勘で買ったのにじゃんけん、つまりどっちかが半分奢らなければならなくなる。
これはこれで学生らしくて好きだがな。
『そういえば、那前は次の大会で初めて出場するんでしたね。対戦表はもう貰ってますか?』
「うん貰ったけど、誰が誰でどれくらい強いかなんてさっぱり」
なんと彼は俺と同じで空手部所属
しかも公式戦で負けたことは今までないという猛者だった。
自主練で組んだとき、わざと負けてくれるという強者の余裕を見せられて、ちょっと泣きそうになったのは伏せておこう。
あとから判ったこととは言え年下の俺にも、というか誰にでも丁寧語で話し凄く親切に人と接する、めっちゃ素晴らしい人物である。
しかも実家は旅館を経営しているらしい。
どうしよう、俺のまわりの奴ハイスペックしかいない。肩身が狭い。
『初めてならしょうがないですね。でも那前なら勝ち進めると思いますよ。俺とあたるとしたら決勝戦なので、その時はよろしくお願いします。』
「うん…勝てたら、の話ね。俺が」
自分が決勝戦に行くと確信できるほど彼が強いのは知っているが、初出場の俺が決勝戦まで行けると思ってるのはさすがにちょっと買いかぶりだと思う。
プレッシャーがすごい。
まぁ応援してくれる気持ちは嬉しいんだが。
『大丈夫、那前は強いですよ。…凄く。』
「真くんにそんなこと言われたら、俺チョー頑張るしかないじゃん…」
はい、頑張ってくださいね。と土産が入った袋を揺らしながら彼、京極真は朗らかに笑うのだった。