探偵たちと!

□高校1年生になる前編
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『おい、お前も行くぞLA』

「俺に拒否権はないんかい」











というわけで園子ちゃん除く俺たち3人は、新一のご両親に会いに行くためにロサンゼルス行きの飛行機に乗っている。



園子ちゃんはお家の用事が有るらしく、どうしても来ることができないと言っていた。

残念だなぁと思っていたんだがもしかして、
俺もキャンセルしてたら新一と蘭ちゃんは今頃ふたりきりでラブラブできたんじゃね?
園子ちゃんもしかしてこれに気づいてたんじゃね?
と思って今この瞬間俺の存在を消したくなった。

気づいていたなら言ってくれよ園子ちゃん…




そう思いはすれど飛行機に乗ってしまったものはもうどうしようもないし、俺は透明マントも持っていないから空気にもなれやしない。

ふたりは俺をハブってラブラブできるような子達じゃないから、飛行機内では我慢してもらうしかなさそうだ。
その代わりロサンゼルスに着いたら、観光の時間はふたりだけにして思う存分ラブラブしてもらおうそうしよう。






俺が脳内でそんなことを考えているとはつゆとも知らず、ふたりは時差ボケ防止のために仮眠をとっている。
蘭ちゃんはしっかり熟睡中だが、彼女がもたれ掛かっているせいか時々目蓋越しに虹彩の部分がキョロキョロしているので、多分新一は起きている。
というか寝れないようだな。
がんばれ思春期男子。

俺は寝る。
別に非リアが悔しくなってふて寝するんじゃない。
時差ボケ防止のためだぞ嘘じゃない。
寝るったら寝る。

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『ねぇ、那前。起きてよ那前!那前ってば!…………だめ、那前ぜんぜん起きてくれないよ新一。』


幼馴染みのひとりである彼女の、怒ったような困ったような声を聞いて、工藤新一はもう一人の幼馴染みに対し呆れを通り越して感心さえおぼえた。

こちらは意中の女の子のせいでまともに寝ることができず、加えて独りでの殺人事件の初の謎解きに際して心臓バックバク(無論顔には出していない)であるのに、彼ときたらどうであろう。


不穏な空気を感じとってか、現場近くの座席の人間はもちろん、そこから噂が広まってか今や那前がいる座席の周辺までのほぼ全ての乗客が起きて何がどうなっているのかとざわざわしている。

耳を塞ぐほどではないにしろ、常人の安眠を妨げる程には耳障りな環境だと思われたが、彼はそのなかでもすよすよと気持ちよさげに熟睡している。
起きる気配はない。
この幼馴染みは心臓に毛でも生えているのだろうか。


「まじかよ……」

『でも新一、那前起こしてどうするつもりよ?せっかく気持ち良さそうに寝てるのに…』


そう自分は、何も彼の安眠を羨んで、腹いせに起こしてやろうなんて思っていない。
ただこの事件を解くに不可欠な物的証拠について、彼に二三聞きたいことが有ったのだ。

別に聞くのは誰でもいい、と言うか寧ろ女性である蘭に聞いた方が情報は正確だと思うのだが、内容がアレなだけに、平手か拳が飛んでくる可能性が否めなかった。

しかしこの情報ひとつで、あの人の犯行が可能になるのだ。
真実にたどり着けるのだ。

一言二言、答えてくれさえすればいいのに。
昔から家事を手伝っていたという彼の、母親が持っているであろうアレの……


「(…やっぱり蘭に聞くっきゃねえのか……)なぁ蘭。お前って――――――」




真実にはたどり着いた。
平手も飛んで来なかった。
その後しばらく空気が微妙になっただけで。






『…ッ…ふぁ〜……あれ、なんか周りざわざわしてねぇか?』

「嘘だろ着陸まで1回も起きなかったぞコイツ…」

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