探偵たちと!

□高校1年生になる前編
1ページ/9ページ



この世界の住民として暮らし始めてはや十数年、中身が三十路に入った俺はとうとう高校生になった。
入学祝いに買って貰った携帯が分厚い。ポケットがキツい。

何処に入学したかは、まぁ、もう言うまでもないだろ。

入学後1週間で目立ち始めた若白髪は、ある程度予測はしていたがやはり周りにはだいぶ心配された。
心配してくれるのは嬉しいんだがな、違うんだ、ストレスでも高校デビューでもなくてただの隔世遺伝なんだ。
だからそんな真剣に病院を探さないでいいんだぞ蘭ちゃん。

蘭ちゃんと言えば
俺は今度こそちゃんと部活に入れたんだ。
空手部。
仮入部の時に見た塚本センパイの蹴りのフォームが美しくてな、もっと間近で見たいと思ったから思わず入部してしまった。
男のセンパイが俺の入部をめっちゃ喜んでらっしゃったようだが、なにを隠そう何気に俺は空手初心者である。
オッサンに習った武道もどきのせいでかなり変な癖もついたと思うから、空手の大会で役にたてるのはもっとさきになるだろうな。
ごめんよ足手まといで。

今のところ事件ホイホイになってない新一は俺とは逆で、今回はなんと帰宅部になるらしい。
そろそろ探偵業に専念したいからとかなんとか。
高校生の言葉とは思えん。
そして高校生になっても蘭ちゃんと登下校している。リア充め。

そんな俺と新一だが、俺たちは高校生になってからどちらも家に両親がいないということで、一人暮らし同盟、なるものを組んだ。
言い出しっぺは俺じゃなくてなんと新一だ。
特にやることは中学時代と変わらず、たまに相手の家に遊びに行きダラダラ二人で過ごすというものだし、なんでわざわざ?と思っていたのが伝わったらしく、奴はちょっと拗ねた感じで

『なんか特別みたいでいいだろ……』

とか抜かしやがった。
別に可愛いなこいつとか思ってないぞ絶対。
とっさに撫でようとした右手を押さえてなんかないぞ絶対に。
なんだよお前やっぱり可愛いな16歳だもんなぁ、と脳内では撫でまわしてなんてないぞ絶対に。

しかしまぁ案の定と言うか、野郎の俺たちはふたり揃って料理が下手にクソが付くほどできなかった。
俺は久しぶりにあんな不味いカレーを食った気がする。
たまに料理を分けてくれる蘭ちゃんと野菜の切り方を教えてくれた園子ちゃんには頭が下がるよ。

『新一も那前も、よくこれで生活できると思ってたね…』
『何入れたらこんな色のカレーになるのかしら…ふたりとも変なところでチャレンジャーっていうか……』

女の子は凄いな。
ふたりが並んで立ってるだけでキッチンが聖域に見えるぞ。俺たちの魔窟とはえらいちがいだ。

『俺は炒めて煮込んだだけだから、原因があるとしたら明らかに那前だろ?』
「野菜切るだけで何を仕込む隙があるんだ?新一が煮込んだ時になにかしたんだろ。責任逃れは良くねぇぜ。」
『もう!ふたりともそんなことでケンカしないで!』
『もうふたりは放っておいて私達だけで作って食べましょ蘭』



当初の予定とは120度ぐらいズレてはいるものの、俺は何だかんだと此処での生活を楽しんでいる。
後は料理さえなんとかなれば…無理かな……

次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ