探偵たちと!
□小学生〜中学生ら編のこと
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【新一と那前】
那前はよくわからない奴、というのが俺、工藤新一の認識だ。
出会いのシチュエーションが何気無いものだったせいか、はたまた俺の注意がある少女にしか向けられていなかったからなのか、那前への最初の印象は、少し賢いけれど物凄く大人しそうな奴、といったぼんやりしたものだった。
ただ、自分と同じくらい賢いだろうとおもっていた少年が、絵本を読みながら泣いていれば驚くしかないだろう。
みんなで散歩中に、ひとりだけ猫を追いかけて迷子になれば呆れるしかないだろう。
みんなで犬を描くとき、アンテナにしか見えない絵を描いていればもう笑うしか無かった。
気づけばいつの間にか隣にいることが当たり前になっても、俺は那前という人間がよくわからなかった。
父さんのような絶対裏がある謎めいた感じでもないし、ホームズを読んでる時みたいな心踊る不思議さなんかじゃない。
俺はただただ純粋に、アイツが時々何を言っているのかわからなかった。
那前が時々くちずさんでいたのは俺が聴いたことがない歌が殆どで、いつの日だったか誰の曲か質問したことがあったんだが
「お前が歌ってるやつ、どこの歌だよ」
『え……ど、どの曲?』
「全部」
『全部!?えー……ほとんどジャンプのアニメとかクインテットとか?アンパンマンはたまにしか歌わないし……』
な?意味わかんねぇだろ?
アイツは時々、あーいった感じで誰も知らないことを、さも常識であるかのようにポロッと言うことがある。
俺もそのときは、ただ俺が知らないだけだと思ってへー題名とか知らねぇの?なんて返したが、その日帰って父さんと一緒に調べてみても、世界中の楽曲ラインにアイツの歌っていた歌は何一つ載っていなかったし、『アンパンマン』なんて存在も確認することはできなかった。
よくよく考えれば名前からして可笑しいだろ。何だよアンパンマンって。アンパンが好きなヒーローなのか。顔がアンパンにでもなってんのか?
いや、それはないな。怖すぎる。
あの父さんをして『彼の頭のなかは、どこか異世界と繋がっているのかもしれないな。』なんて言わせるんだから、たぶん那前の言ってることを俺が完璧に理解するのはずっとずっと先になるかもしれない。
不可能だとは思ってない。
だって俺は将来ホームズになるんだから、那前ひとり解きあかせないわけがない。
ただ今は情報が少ないんだ。
だから俺はもっと那前と一緒にいて、那前について知る必要がある。
「おーい那前ー!サッカー付き合えよー!」
『えーまたー?』
今日も、那前への興味は尽きない
「(音楽好きなら、家に余りあるしヴァイオリンでも付き合わせてみようかな…)」