探偵たちと!
□保育園に行く
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【フラグを回収しよう】
今日は月曜日
俺は潔く幼稚園に出頭した。
しかしまたもや問題が発生する。
『(………どこだよここ)』
通う場所が“前世”と違う。
幼稚園じゃなかった
すれ違う園児たちに見覚えがない。
ここがコナン世界だからか?
幼稚園と保育園ってかえる必要あるか?
それから気づいた。
両親が前世そのままだったから忘れていたが、俺には幼稚園から付き合いのあった奴らがいた。
幼なじみってやつだ。
気のいいやつらだった。
みんなで馬鹿して、みんなで怒られて、泣いて笑って。
そいつらはこの世界にはいないんだよな。
もう、会えないんだよな……
あっちで俺が死んだなら、葬式来てくれたかな。
え、来るよな多分。
てかここマンガ世界だしもしかしたら画面越しに再会とかできたりしないか?
あーでもそのためにはメインキャラクターと絡まなきゃいけねぇ。もし俺が出られるとしても被害者か容疑者のどっちかだよな。
すまんみっちゃんやっちん。再会はできそうにない。
「おはよう那前くん」
「おっはよー那前くん!」
あぁ、ここでも友達いたんだな俺。
しかも女の子ふたりもいんじゃん。モテ期かよ。
だが幼女は対象外だ。残念。
しかし困った今の俺はこのふたりの名前すら知らない。
あぁ、名札あんじゃん。
『おはよう、毛利さん、鈴木さん』
俺は昨日コナン世界には関わらないと言ったな?
端的に言おう、無理だった。
───────
俺は死亡フラグを建てる才能があるのかもしれない。
もうヒロインに会っちまった。
ふ、よもやリアル幼児期からメインキャラクターと相見えることになろうとは……もうどうしようもねぇじゃねぇか!!
つらい!!
主人公じゃないだけまだマシ?甘いな、毛利さんと奴は所詮幼なじみだぞ?いつ奴とも会ってしまうかわからない、もしかしたら親が引き合わせやがるかもしれない。
つまり、逃げ場がない。
だがそこで俺はひらめいた。
なにも仲良くする必要はないのでは。と
仲良くしなければ関わり合いになることもない。
ということは事件事故にも巻き込まれない。
これだ。
あいさつを交わしただけの存在。
これがいい。
これで深く関わることはない。
メインキャラクターだけ避けていても怪しまれる可能性がある。
今現在お子ちゃま名探偵の推理力がいかがなもんかは知らないが、それを疑問にネチネチ言ってくるかも知れねぇ。
人見知りってことにして全員から距離をとろう。ぼっちは辛いが、中身高校生の俺には逆に良いのかもしれない。園児に混じってお遊戯とか恥ずかしすぎて死ねる。
そう思うとコナンくんはすごい。
あこがれはしないが。
あれから数日過ぎたが、
保育園楽しいぞこれ。
誰とも極力関わらないようにしようと思っていたが、俺は以前から孤立していたようで特に親しい子どもはいなかった。いやこれはこれで以前の俺が心配になる。
独りでレゴをするのも虚しいのでとりあえず絵本と折り紙に勤しんでいる。
ひっさびさに絵本を読んだがなかなか面白い。勧善懲悪と孟母断機がボロッボロに噛み砕かれてやさしく説明されて本1冊でも充分にストーリー性があるからバンバン読める。
絵本なめてた。
不覚にも「やさしいあくま」を読んで涙腺崩壊してしまった。
先生にめっちゃ心配された。絶対情緒不安定な子だと思われた。ごめんなさい先生。
しかもお昼寝とかあんのかよ俺の幼稚園にはなかったぞおい。
そりゃあ子どもだもんな、一日中遊んで疲れてるよな。
俺は絵本読んで折り紙折ってただけだからあくびも出ない。
正直ひま以外の何物でもない。
────────
『グズ……どうしよう……ウゥ…』
薄暗い部屋で女の子の啜り泣く声が聞こえる。
一瞬ホラーかと思ったが、ここが保育園だと思い出し叫ばずに済んだ。
意識を覚醒させてあたりを見渡せば近くで女の子が泣いているのが見える。
おい、ぼーっとしてたってことは、つまり今まで俺は半分寝てたってことか?全然動いてないのに?全く幼児の身体って恐ろしいわ……
今この部屋で起きてるのは俺とその女の子だけらしく、関わらないと言ったもののさすがに近くで泣いている女の子を放っておくのは忍びなかった。
とりあえず俺は女の子に話しかけた。
あ、まずい毛利さんだこいつ。