トリガーハッピーと銀の弾丸

□なな
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『あら、今日はもう上がり?』
「おう、お先ー」

任務の報告を終え通路を歩いていると、通路の向こうから歩いてきたのはベルモット。真っ黒なスーツに真っ黒なスカート、彼女も任務の何かかな。
いつも通りすれ違いざまに一言二言だけ内容のない会話をして通り過ぎた俺を、ねぇハンターと後ろから引き留めたのは彼女だった。
珍しい。

『アナタ、最近楽しそうね』
「……そうかァ?いつもと変わんねぇと思うけど」


俺は彼女と長い話をするのが少し苦手だ
彼女だけでなく、ジンやバーボンみたいな参謀系のやつらと話をするのが苦手だ
“嫌い”じゃないぞ
あくまでも“苦手”なんだ

『あの子たちが入ってくるまでオモチャにしか興味がなかったのに』
「オモチャ言うな。そんなんだからキャンティに嫌われんだぞアンタ」

『ジンも言ってたわよ、彼らと一緒だとアナタすごく人間らしくなるって』

彼つまんないって拗ねてたわ、とその時の様子を思い出してるのかクスクスと笑ってみせる。
笑うだけで様になるなんて、さすが人気舞台女優。
……いやおかしい、俺はいつでも人間だし、え、人間…だよな……?
なんで人間らしくしてるとジンに拗ねられるんだっての。俺が楽しそうにしてるのそんな気に食わねぇのか、理不尽極まりねえなあの銀髪。
それより“彼ら”って誰だ?ライ?スコッチ?……バーボンはないか。

『でもいい夢を見たぶん、目覚めたときが辛いと思わない?』
「…?…さぁ、そもそも俺夢見ねぇし」

まぁ見ても全部忘れるしな
おい、さっきから何なんだ
話がまったく見えてこねぇぞ
言いたいとこがあるならはっきり言ってくれねぇと困るぜ。
俺はジンみたいに詩は嗜んでねぇんだ

『浮かれすぎは良くないって言いたかっただけよ、じゃあねハンター』

言いたいことだけ言って、彼女はさっさと行ってしまった。

「…なんだったんだ?」

頭を使うコミュニケーションは俺には向いてねぇ気がする。
やっぱ頭いいやつとの会話は苦手だ。






スコッチがNOCだったということ、そして彼を始末したのがライだということが情報として回ってきたのは、この会話をした日からしばらく経ってからだった。

「……なるほど、道理で“いい奴”だったわけだ」
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