トリガーハッピーと銀の弾丸

□ご
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俺のなかでわりと「諸星くん」呼びが定着しちまってたらしく、コードネームを教えてもらった後も何度か「ライ」じゃなくて「諸星くん」って呼んじまうちょっとした問題が発生している。
よくよく考えてみれば、俺と会う前からコードネーム貰ってるやつはそもそもコードネームでしか呼ばねぇから本名覚えてねぇし、本名でしか呼べない新入りはコードネーム貰う前に消えてるなんてことがざらなんだよ。諸星くんのケースが珍しいんだよなぁ、出世が早いってことか。
あ、また諸星くんって呼んじまった。
ライ、ライ。
早く慣れなきゃな。

「今日もお仕事お疲れ様!はい乾杯!」
『…あぁ』『乾杯!』

俺は仕事終わりに一緒にいたライとスコッチを率いてお気に入りの料理店にご飯を食べに来ていた。一般人がたくさん居て値段もちょっとお高めだが、料理の種類が豊富で味もすごく俺好み。
本当はあと何人か一緒だった筈なんだが、仕事が終わって俺が誘う前にすぐ帰りやがった、次は逃がさねぇ絶対に。仕方ないからこっそり帰ろうとしていた二人を捕まえて半ば引きずるようにして店に連れてきたってわけだ。
え、二人が可哀想だ?いやいや、途中からちゃんと自分の足で歩いてたから行く気にはなってたんだろ。スコッチは店名言った途端に行く気になったから、前にもこの店来たことあんのかな。わかる、旨いよなここの料理。

「二人ともあれ食べたことあるか?カタツムリのやつ。なんかな、不思議な味がして楽しいぜ」
『エスカルゴのことか、俺は食わん。スコッチは食べるらしいぞ』
『お、俺もソレは遠慮しとこうかなぁ…』

ライフルケースが目立つからいつもは任務完遂後それを片付けに1回戻んなきゃなんだが、今回人目の多い場所を経路に使った理由でいつものライフルケースじゃなくて大きめのギターケースを代用したんだよ。最近のギターケースって以外と入るもんなんだな、驚いた。
てなわけで、任務直後でも裏稼業専用とかじゃない店に入れてるんだぜ。端から見た俺たちは駆け出しの売れないバンドマンにしか見えねぇはず。いやそうでないとこまる。

「いい食いっぷりだなスコッチ」
『いやぁ、動いたあとは腹へるだろ』
『にしても頼みすぎだと思うがな』

スコッチ、頬に詰め込みすぎて胡桃丸呑みしたリスみたいになってる。可愛いかどうか俺には分かりかねるがな。
いや不思議だ、がつがつ食べてるのに汚くなってないし不快感が全くない。まず箸の持ち方がきれいだ。スコッチ実は良い育ち説。

「ライ、全然頼んでないな。もしかしてお腹いたいのか?」

既に4皿目へと手を伸ばしているスコッチとは反対に、彼はサラダとスープしか頼んでないようだった。
ただ乗り気でなかったんじゃあなく体調不良か何かで行くのを渋ってたなら、俺はライに謝らなきゃいけないのか…?言ってくれれば帰らせたのに

『あぁ、実は明美におにぎりを持たされていてね、後で食べるからここでは余り食べられない』
『……泣くなよハンター、非リアなのは俺も同じだぜ?』
「な、泣いてねーし」

俺は謝らなくて良い感じだな
むしろライの方から『リア充ですまない』くらいあっても良いと思う…いや待てそれはそれでなんか虚しい…

「3人しかいねぇから、今日は俺の奢りな!金もカードも有るぜ」
『いいや!ここは一番食べた俺が払うべきだろ、元々そのつもりだったし』
『俺も年下に払わせる趣味はないが、このままだといつまでたっても決まらない、平等に一人8,530円ずつで良いんじゃないか?』
「ライ……計算してたのか」

会計の時になってから、ちょっとした討論みたいなことが起きた。支払いの押し付け合いは見たことあったが、逆のパターンは初めてだ。真面目かコイツら。
最終的にじゃんけんで勝ったライの意見が通って、支払いは割り勘になった。
次行った時は俺の奢りにしてやるぞ、絶対。

あれ、ご飯食べただけなのになんか楽しかったな…
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