トリガーハッピーと銀の弾丸

□よん
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ジンに聞いて初めて知ったことだが、この組織は、古株や優秀な人間にはお巡りさんとか周囲への身バレ防止に酒の名をコードネームとして与えられている。ただのかっこつけじゃあなかったらしい。
かくいうある意味古参な俺の「ハンター」というコードネームも、飲んだことはないが何かの酒の名前なんだろう。いや、カッコいいとは思うぜ?思うんだけれども、学のない俺としては、名前を聞けばあーあの酒ね!ってなる感じのもう少し分かりやすい名前のチョイスにしてほしいもんだと思う。
え、お前が勉強すればいいだろって?まじごもっとも。例えばジンとかウォッカは分かりやすくていいよな。でも逆に覚えにくい名前だってちらほらある。アクアビットとかベルモットとかどんな酒なのか想像できねえ。
あと紛らわしい名前の酒もやめてほしい。シェリーのこと何回かチェリーって間違えて思いっきり頬っぺた引っ張られたのはいい思い出だぜ。
あぁ言いたいことはそんなことじゃねぇんだよ。聞いて驚け、なんと今回諸星くんにコードネームが与えられることになった。これはめでたい以外の何物でもない。

「おめでとう!おめでとう諸星くん!やっぱりきみスゲェんだな!」
『……これからはライと呼んでくれと言ったはずだ』
「ライ?ライ麦のライか!良い名前だな!覚えやすい!よかったなライ!」
『ライ麦のライとして覚える方が手間じゃないか?』

んん?そうか?まぁ細けぇことは気にしちゃまけだぜ

『こんなところで油を売っているなんて、余程暇なんですね、ライ』
『おい、バーボン、勝手に先に行くなっての…あ、ライじゃないか』

人の出入れも落ち着いた昼下がりの休憩室で行われていた俺たちの会話に入ってきたのは、ライと親しい風の浅黒金髪と、俺たちと同じ狙撃手してるはずの猫目アゴヒゲ。ジャンルは違うがどっちもイケメンだ、爆ぜろ。

『…おや、そちらは?』
『あぁ、彼はハンターだ』
「よろしく!」

そういえば、諸星くんの他にも何人かコードネームを貰うらしいとか聞いた気がしなくもない。もしかしてその人たちだろうか。諸星くんのインパクトが強すぎて今の今まで忘れていたけど。
いやね、諸星くん含めてみんな顔面偏差値高すぎるんだが。あんまり隣に並びたくない

『僕はバーボン、情報収集を得意としています。もちろん、それ以外もやって見せますがね?どうぞお見知り置きを』
『スコッチだ、何回か会ってるけど、改めてよろしくな』

営業スマイルが完璧な浅黒パツキン君がバーボン、狙撃手してる猫目アゴヒゲ君がスコッチ
みんな覚えやすい名前でよかったぜ。

『あなたがハンターだったんですね、噂はかねがね。なんでも若くしてコードネームを与えられた、組織指折りの狙撃手だとか』
「あはは、若いって!あんたとそんなトシ変わんないと思うけどな」
『………』

お世辞云々の判別は得意じゃないが、褒められて別に悪い気はしない。
それほどでもねぇよ、くらいの軽い気持ちで返したのに、突然黙るバーボンくん
何かミスった空気だなこれ

『……トシが変わらない、ですか』
「あはは、……え…バーボン、何歳?」
『…スコッチと同じ、今年で26ですが、なにか』
「ま、マジかぁ……タメだと思ってた。バーボンてアレだな、けっこう童が…」

ん、の音を出しきる前、残りの二人が俺の言葉を理解して吹き出したのと、それを聞いたバーボンが二人のお腹をグーでパンチしたのはほぼ同時だった。

二人の威厳のために詳しくは言わないが、バーボンは見た目によらずゴリラだったとだけ記しておく。
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