トリガーハッピーと銀の弾丸

□に
1ページ/1ページ




新入りの任務には必ず古株や幹部による最低1回の見張りがつく。どうしてなのかは何個か理由があるが、最たるものは、こいつが本当に組織の一員として使えるかどうかを見極めるためだと俺は思ってる。
たかが1回でも、ミスをすれば最悪組織単位でヤバイことになるので、新入りがミスをしないように、もしミスをしたときは尻拭いと後始末が出来るように、慣れてる奴が着いていってやらないとダメなんじゃねぇかなって思うんだ。1回見てわかるやつにはそう言う危険性とかの判断が出来るらしい。俺は出来ないけど。
何処かの銀髪ノッポは、これと同時にそいつが鼠かどうかも必要以上に見ているらしい。絶対友達少ない。


まぁ何が言いたいかって言うと、只今俺はモロホシくんの見張りについている真っ最中だったりする。
見張りにはストーカー派と同伴派に大きく分かれるが、俺はがっつり同伴派だったりする。だってその方が楽しいし。
さすがに入りたてホヤホヤの新入りに重要な任務、例えば要人の脳天とかスイッチピンポイントとかは荷が重いらしいから、まず手始めに交渉係とお話し中である交渉相手の足元を、顔の判別が目視でギリギリ出来ないかな?くらいの距離から狙ってもらっている。威嚇射撃ってやつ。
交渉係はこの射撃で、話に乗らなければ次はお前の脳天だぞ?みたいなことを相手に言って話を進めていくわけだが、この時の着弾は相手に近ければ近いほど評価が高い。相手の緊張が高まるわけだからな。逆にちょっとかするくらいで丁度良いかもしんねぇ。いやモロに当たったらアウトだけど。


「俺が今って言ったら撃ってね、って言うかそれまでけっこう暇だから駄弁ってよーぜモロホシくん」
『……了解』

スコープから眼を離さずに最低限の返事だけこっちに寄越すモロホシくん最高にクール。マジクール。今までの新入りたちはみんな緊張やらなんやらで声が震えたり裏返ったりしてたからモロホシくんの落ち着き様はズゲーって思う。とても新入りとは思えないほどの貫禄。

「じゃあ早速だけどモロホシくん明美さんの当たり屋だったってマジ?」
『…当たり屋じゃない、俺と彼女の出逢いは正しく運命だ。まぁ、少々神の気性が荒かったようだがな』
「え、モロホシくんそんな顔して実はメルヘンチスト?なるほどこれがギャップ萌え……ちょっと違うか」

顔合わせのあと、シェリーに確認したらやっぱりモロホシくんは明美さんの彼氏になったモロホシくんだった。確認するだけだったのにそのあと、やっぱりお姉ちゃんにはもっといい人がいるはずよあなたもそう思うわよねとか、私があの場にいればちゃんととどめを刺したのにとか、10分くらいあの子の愚痴を聞くはめになったけど。
あの時のシェリー苦虫50匹くらい噛んでたんじゃねぇかなってくらい顔険しかったから、あの子のモロホシくんへの好感度はモロホシくん自身が相当頑張らないとマイナスのまんまだと思う。頑張れモロホシくん。

『君は随分と若いようだが、いつから組織にいるんだ』
「あらやだ若いだなんて!お上手なんだからモロホシくんたら〜……冗談だって。生まれたときからだよ」
『……そうか、「あ、今」っ…』


おぉ、素晴らしい反射神経だわモロホシくん。
しかも足と足の丁度真ん中なんてなかなかポイント高いんじゃねぇの?
これなら大丈夫でしょ、うんうん。


「んー交渉上手くいったっぽいな。俺たちも帰ろうぜ…あれ、なんかさっき言おうとした?」
『……いや、何でもないさ』
「あ、そう?じゃあお疲れ様ってことで飲み屋行こ!俺おごってあげる」
『年下に払わせる趣味はない。と言うより先ず君は成人しているのか?』
「えーモロホシくん顔に似合わず堅気ー」



まぁもし交渉が決裂してたら俺が相手を始末出来たから、残念っちゃ残念だけど…。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ