翠玉の彼女と赤い狙撃手

□Incubo
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パァンと音が響いた。

自分の眼の良さをこんなに恨んだことはきっと、あとにも先にもないだろう。


ーーお願いがあるの。友達のあなたじゃなくて、便利屋のアナタとしてーー


一週間前に、親友から頼まれたのは監視。

ある場所から、監視して欲しいと。

なにかやましいことがある奴なのかと思った。

時間も指定され、気づかれない場所で監視した。

結果として、僕は親友を見殺しにした。


僕ノセイデ彼女ハ死ンダンダ……



バッと飛び起きた。今でも彼女が死んだ時のことを無限ループのように夢で見る。1回見たら何度寝てもその夢を見る。

時計を見ると、時間は深夜の2時。

部屋を出て、一階に降りる。キッチンで水を飲む。

時計の秒針が動く音がやけに大きく聞こえた。

「夜……早く明けないかな……。」

キッチンでホットミルクを作り、テーブルに置く。

本棚から数冊の本をとって、ソファに腰掛ける。

本を読んでは次の本を繰り返す。

赤井秀一がよく読む本も、こういう日の為の物だ。

シャーロック·ホームズ然り闇の男爵然り資本論然り。

寝れない夜の暇つぶし。


夜が明けたのは、本棚の本がほとんど読み終えた時だった。



いつもと変わらない、悪夢を見た日。
いつも感じるのは虚しさと後悔と寂しさ。


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