翠玉の彼女と赤い狙撃手
□あ…
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家に帰ったら、赤井秀一がいた。
「また来てたのかよ…?」
いつもは勝手にコーヒー淹れてくつろいでるのに今日はただソファに座っているだけ。
「…どうかしたか?」
そう僕は声をかけた。いつもと違った。雰囲気も表情も。
「……聞きたかったんだ。ふと思い出したからな。」
何を言ってるんだコイツ。
「この前、俺が同僚も連れてきていいかと聞いた時、お前は言ったな。『便利屋さんはFBIの仲間じゃない』と……なんで俺がFBIってわかったんだ?」
あー……やっちまったぜ。
「便利屋さんはFBIのメンバーの名前も把握するのか?」
ソファから立ち上がり、こっちに歩いてくる。
「蓮。なぜ、俺がFBIと知っていた?」
なんでと言われても……ねぇ。
「…アイツらの仲間なのか?」
「それは違う。」
アイツらとはきっと、黒の組織のことだろう。
アイツらと一緒にしてもらっては困る。
「ほぉー。まぁ、確かに蓮がアイツらの仲間だったら俺はこの世にいないはず。じゃあ、君は何者だ?」
何者か……。
その問を聞いた時少し顔を下げた。赤井秀一の顔を見たくなかった。
「ただの便利屋だよ。ただの……無力な便利屋だよ。」
「ほぉー。では、そんな無力な便利屋さん。そんな君を俺が守りたいと言ったら。君はどうする?」
はぁ!?
バッと顔を上げると、優しい顔で見てくるじゃないかこの男は。
「やめておけ……としか言えん。何を馬鹿なことを言ってるんだ。馬鹿じゃないのか?」
困惑しかない。
「俺は本心を言っただけだ。蓮。お前は何を後悔してる?」
何言ってるんだこいつは本当に。
「俺は、好いてる相手に悲しい目も表情もして欲しくないんだが。」
……は?
「なんだその顔は。」
「……僕の言えることは赤井。僕を好くのはやめておけ。僕はお前に釣り合わん。それに……まぁやめておけ。別の人を好け。」
そう言って、赤井秀一のわきを通りキッチンへ行く。
僕を好きになるのはやめてくれ。
親友と言えた女性(ヒト)を救えなかった僕を好かないでくれ
親友と言えた女性(ヒト)を見殺しにした僕を憎んでくれ
「なら、振り向かせるだけだがな。」
そう赤井秀一がつぶやいたのを、僕は知らない。