dv 1

□痣
1ページ/1ページ

ガチャッ『ただいま…』
慧が帰ってきた。声からして今日はとても機嫌が悪いみたいだ。夕食を作っていた手が震えだす。
『なに、まだ夕食出来てないの? こっちは仕事で疲れてんのに?』
「ごめんね もうすぐだからっ、」
怖くて声が上ずってしまう。近づく足音。
「っっいった!!」
髪を掴まれ引っ張られる。
『なに?怖がってんの?』
蔑むような目で笑う。この目は本当に優しくない時の目だ。掴んだままの私の髪を下に向かって引っ張る。倒れた私にすかさず蹴りを入れる慧。怖くて声も上げられない私を見下ろす彼は笑顔だ。
『なに?その顔は。文句でもあんの?』
そう言い私の腕を引き、立ち上がらせたかと思うとキッチンの方へ突き飛ばした。その拍子に引き出しの取っ手に額を打ち、血が流れ出した。痛みと恐怖で涙が止まらないまま、傷口を抑えることしか出来ない。
『あー痛かったね?おでこ大丈夫?』
「っっぅ、、ごめっ、、ごめんなさいっごめんなさい」
しゃくりあげながらひたすら謝った。彼はしゃがんで私と目線を合わせ、綺麗な指で私の額の血を拭き、傷口にキスをしてから、
『じゃあ今度からは夕食の支度遅れないようにね?痛くしてごめんね?』
笑顔でそう言うと1度だけ私を抱きしめて自分の部屋に入っていった。震えながら夕食の準備の続きを作る私の腕は人前に出せないほど痣だらけだった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ