アメジストに手を伸ばす

□Episode.1
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訳も分からないまま許可を貰い、施設内を歩いていたら、男の人に止められて連れていかれそうになった私
それを、黒いフードを被った女性が守ってくれた


「…ごめん、連絡がいってなかったかな
この子はキングの客人。まだここに慣れてないんだ、見逃してあげて」
「キングの…!?そうとは知らずご無礼を!」
「いや、こっちの不手際もあるしね
とりあえず、他にも伝えられるだけ伝えといてくれる?」
「了解しました、ナイト!」



それはさっき、レインから手渡された機械で会話した人の名前だった

この人が、"ナイト"
レイン曰く"一番キングに近い人"…らしい
私よりも少しだけ背の高いその女性は近くに居る他の人達にも同じ事を言っていく

ある程度言い終わった後、軽くこっちを振り向いたがフードで顔は見えなかった
それでもお礼が言いたくて話しかけてみる


「あの、ありがとうござい…」
「では私はこれで」
「えっ」


私の言葉を食い気味に途切れさせたとと思えば、そのまま早歩きで去って行こうと方向転換していた

その身のこなしの早さに追い付けず、置いていかれるかと思ったその瞬間


「何してるんです貴女、馬鹿ですか?」
「ぐえっ」


見覚えのある白い男、ビショップが彼女を引き留めた


「放って行ってどうするんです」
「いや、だって」
「じゃあ迷ったままで良かったんですね?」
「うっ」
「まったく。ほら、連れて行きますよ
撫子さん、こっちです」
「ちょ…離して!」


腕を引っ張られて反射的に踏ん張った
この人の言う通りにするのは癪に触る、けど黒い女性が


「…部屋に連れて行くだけです
その手、離してやってくれ」
「…はいはい」


そう言ったし、実際ビショップは手を離してくれたから大人しくついて行くことにした



部屋に行く途中、その二人に皆の事を聞いて見れば衝撃的な言葉が返ってきた
曰く、この10年後の世界には成長した皆が居て二人は私が知っている人なのだと


「ぼくは、ポジション・ビショップ。これは役職名でしてね
本当の名前は、英 円といいます」


その言葉に驚いている私を置いて、黒い女性にも自己紹介を促すビショップ…いや、円

最初は嫌がっていた彼女も、円の言葉に納得する事があったようで、分かったと声を出した
少しだけ戸惑いを見せたが、女性は意を決した様にフードを下ろして私を見た


その顔を見た瞬間、通信の時よりも強い予感がした
いや、これはきっと予感ですらない
けど彼女の事は、貴女の事はいつも分かる


「…アワー警備隊隊長ポジション名ナイト

本名、九楼 大和」


だって、私達は双子なんだもの
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