長編
□CASE2「任務」
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今日から私は警備局警備企画課へと配属された。
警察庁の職員が現場で活動することは少ないが、ここのチームにいる降谷零という男は現場を指揮しながら自らも最前線に身を置いているということで有名だ。
そして、亡くなった諸伏さんの幼馴染……。
公安となると命懸けの仕事だ。
私も身を引き締めて行動しなければ。
まずは降谷さんとの打ち合わせがあるため、会議室へと向かった。
コンコン。
ノックをすると「入っていい」と声がしたため、ドアを開けた。
そこには顔の整った金髪の男性がノートパソコンに向かって座っていた。
ものすごい速さでキーボードを打ちこんでいる。
「失礼します」
私が中へ入ると手を止め、パソコンを机の端に避けた。
「そこに座ってくれ」
言われるがままに椅子に腰かけた。
この人、怒ってる……?
話し方はぶっきら棒だし表情が怖い。
「僕の名前は降谷零だ。君の仕事に関する指示は僕がする。君のここへの滞在期間は今期までと聞いているが間違いないか?」
「はい。私もそう聞いています」
「そうか。なら最初に言っておくが、僕は君がここにいることを歓迎していない。ここは興味本位で手を出していい現場ではない。知識は豊富と聞いているが、現場ではたった一つのミスが命の危機に繋がる。だから僕は君を捜査官として育てる気はない。見学がてら僕に言われた通りに動いてくれ。そうやって今期だけやりすごすつもりだ」
とても綺麗な顔立ちからどんどん出てくる厳しい言葉。
たった一つのミス……
それを私がしないとは到底断言できない。
こればもう従うしかないのか……
「今君に頼みたいことは、僕が安室透というて勤務している喫茶店で一緒に働くことだ。潜入先の組織や捜査の関係でしばしば休みや早退が続いているので店に迷惑をかけているんだ。そこをカバーしてほしい」
降谷さんから与えられた仕事は喫茶店の店員としての仕事だった。
「それ……だけですか?それだけなんですか?私の仕事は」
確かに私は仕事ができない。
しかし、私だってこの国を守りたいという意志が合ってこの仕事を選んだ。
それなのに喫茶店で時間つぶしだけなんて……
「もう一つ、大事な役割がある。護衛だ」
「護衛……って誰のですか?」
「榎本梓。君が働く喫茶ポアロの女性スタッフだ。僕は組織内でそんなに好かれている方ではないから、普段彼女は僕と接していることから組織の人間が近づいてくることも考えられる。そこを注意深く目を光らせていてほしい。彼女に警戒されずに近づくには同年代の女性同士である君にしか頼めないかもしれない。だからこちらがメインだと思ってもらった方がいい」
関係ない一般人を巻き込むわけにはいかない。
これは大事な任務だ。
「承知致しました。榎本梓の護衛兼喫茶ポアロでの勤務、全力であたらせていただきます」
その後、組織についての説明を聞き、私は会議室を後にするのだった。