長編

□CASE1 「優秀」
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昨晩日付の変わる頃、降谷さんから連絡があり、今朝早くに警察庁へ来るように言われた。

潜入先で何かあったのだろうか……?

不安を抱えながら重い足取りで警察庁へ向かう。






到着すると疲れた様子の降谷さんに出迎えられ、小さな会議室へ通された。

「風見……。こちらの事情で悪いのだが、*** ++が来週からうちのグループに異動してくることになった。うちに在籍していた時に名前くらいは聞いたことがあるだろう?」

「ま、まさか、彼女が!?」

警察庁で彼女を知らない人間などいなかった。

なぜなら彼女は降谷さんの二年後に入庁し、降谷さんの成績を超えトップになったということで有名だからだ。

「成績は良いらしいが、どうも仕事がからっきしできないらしい。正直突っぱねてやりたかったが、どうも彼女は来期から法務省への出向が決まっていて下手な扱いができないと上から説得されたよ……そんな役立たず辞めさせてやりたいと思ったが、どうやら彼女は法務省への貢物として最適らしい」

申し訳なさそうに降谷さんが顔をしかめる。

「短い期間でしたが警察庁へ在籍期間のあった私にも事情はわからなくはありません。ただでさえ男社会の警察組織で警察庁から法務省への出向となると、かなりのハードルでしょう。今後そのような声のかかる女性官僚が何年後現れるかわかりませんから……」

「理解してくれて助かるよ。こちらは命を掛けて人生を捧げているようなものなのに女の御守までさせられるなんてたまったものじゃないよな」

厄介事が増えたと言えば間違いなく増えた。
しかし、上司の降谷零は私たち以上に危険な場所に身を置き、ハードな仕事をこなし続けている。それを見ているからこそ、彼からの申し出は断る気にはならない。

「本当にすまない。できる限り僕が相手をするが、風見にも迷惑をかけることが出てくると思ってな。とりあえず彼女には潜入捜査なんてもっての外だから、ポアロのバイトでもさせて今期中をやり過ごそうと思う。僕が急にバイトを休んだ時の代理としてだ」

「降谷さん、ポアロの仕事結構抜けられてますものね」

「ああ。周りの従業員には悪いと思っていたからな。彼女は学生時代ウエイトレス経験もあるし、見栄えも良いから接客としては役に立つだろう」

そう、彼女はモデル並みに顔が良い。

少しはポアロへ男性客を集客してくれるだろうか。

安室透がポアロで働き始めたおかげで店には女性客が増え、男の私が近付くと目立ってしまうことがある。

その辺が解消されるとなれば悪い話ではない。

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