BLEACH

□日番谷隊長の願い事
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ジメジメとした梅雨の季節も終わりを迎え、
ムシムシとした夏の暑さが増していく七月。
そんな七月に夏祭りの次にメインイベントだと
言ってもいいほど皆が待ち構ているイベントがある。

「なぁ、冬獅郎。今日は七夕だな」
「ああ。」

短冊に願いを書いて
竹棒に吊るせば願いが叶う─"七夕"

現世の人間達はどうやらその七夕の日を
楽しみにしているらしいが、
俺は七夕の日であろうがいつものように
自舎任務室で書類と向かい合っていた。

そうして俺が黙々と書類に取り込んでいるなか
声をかけてきたのは死神代行の黒崎一護。
何故かは知らねえがここ最近黒崎はよく俺の元へ訪ねる
何も企んではいねえとは分かっちゃいるんだが…


「…てめぇは毎日何故俺のとこに来る」

冬獅郎が率直にそう訊ねると一護は疑問を浮かべた顔で
答えになっていない曖昧な返し方をする。

「俺が来てえから来てるだけだ」
「………答えになってねえ」
「なんだろな…冬獅郎に会いてえからかもしれねえ」
なッ……ッ!?

いや、待て黒崎。てめえは何を言ってんだ?
"俺に会いたいから"だと………?
それは流石に冗談がキツすぎねぇか?
というよりそのような答えを作ったきっかけは俺か…
こういうときはどんな顔すりゃいいんだ?
大体俺と黒崎は恋人でも親友でもねえのに………あ
そうだ、恋人でも親友でもねえからこそ言える言葉
ちゃんと俺は使っていたな。よし。


「…冬獅郎じゃねえ。"日番谷隊長"だ」
「ぷッ、またそれかよ?
………まあ、それもそれで冬獅郎らしいけどな」
「なッ、だ、だから冬獅郎じゃなくて"日番谷隊長"
だと言っているだr───」
「とにかくよ、それ終わったら行こうぜ」
「…行こうって何処にだ
それに簡単に書類を片付けられると思うな」

俺の話を最後まで聞かない上
仕事が早く片付くなんて思っていやがる。
この書類の量ちゃんと見えてるだろうが…
隊長各にとってもこの書類の量を片付けるには
朝から夕方までかかるというのにお前は…


冬獅郎は一護の発言に軽く苛立ちを覚えて
そう呟きながら淡々と書類物を片付けていく。
するとそこで一護の口から予想外の発言が漏れ出す

「なんなら俺も手伝うぜ」
「…………は?え、ちょッおいッ!?」
「っと…これを確認していきゃいいんだよな。
ってなんじゃこりゃッ!?何が何だかさっぱりだ…」
「…死神代行が理解できる内容じゃねえからな」
「くそ…せっかく冬獅郎の役に立てると思ったのによ」
「…………」

そうは言ってるが本当は自分が早く行きたいんじゃ…
………でも、そこまでして俺の手伝いを手伝わなくても
七夕の祭りやらに行けるはずなのに。
どうして俺の仕事を手伝ってくれんだ?
…考えてても仕方ねえ。今回ばかりは黒崎に身を委るか


「…ならこれを松本に渡してきてくれ」
「…!乱菊さんは何処にいんだ?」
「…十番隊舎の中庭に居るはずだ。
あいつはいつもそこで昼寝をしているからな。
場所は分かるか?」
「おう、前にも行ったことあっから平気だ!またな!」
「…ああ。」

一護は冬獅郎から乱菊に渡すものを受けとるとすぐに
冬獅郎に背を向けて瞬歩で中庭へと向かっていった。
その様子を最後まで見つめていた冬獅郎は席について
筆を動かし、何かを書き終えるとふとこう呟く

「…お前と祭りに行ってみるのも悪くねえな」


フッと優しい笑みを浮かべて
一護が先程立っていた場所に目を配る。
そして筆の先には冬獅郎の秘められた願いが綴られていた。


END.

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