BLEACH

□大好きな雪狐【前篇】
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時は201×年12月初旬。
外ではシンシンと静かな音で
建物の屋根に降り積もる白い物質。
それは触れると冷たくて
すぐに溶けてしまい水となる物質─

────────

春に散る桜秋に彩る紅葉と同様で冬に降り積もる雪は
現世に限らず瀞霊廷にも姿を露とする。
“雪”が降り落ちるのを目の当たりにし
その雪をじっくりと見つめる死神がいた。

「……雪ッ…」

その死神は銀髪を立てており、瞳は翡翠色で大きめ。
唇は分厚さは薄めで薄桃色をしている。
その死神は自室の外にある廊下に
座らずに立ち尽くしたまま、雪を無言で見入っていた
そこへ同じく銀髪で髪の毛は短めショートで
目は閉じていて妖しげな表情をした死神が
立ち尽くしている死神に声をかける。

「あれ、日番谷はん?どないしたん?」
「…市丸。何しにきた」

冬獅郎は市丸の霊圧を感じ取っていたのか、
市丸に話しかけられても驚くことなく
いつものように冷静に問いかけた。

「何しにきたってそりゃ〜日番谷はんに
会いにきたんに決まってるやん!」
「別に俺はお前と会わなくて良いんだが」
「なんでそない冷たいん…!?もっと優しくして〜な…」
「お前に優しくする必要ねえ」

冬獅郎ははっきりと物言う。
その発言に市丸はムスッと頬を膨らませ

「……別にええよ?日番谷はんなんか知らんから」

“もう知らん話しかけへん”と言いつつも
市丸は冬獅郎の傍から離れようとしない。

「……俺の事はもう知らないのじゃなかったのか?」
「ああ、知りまへん!プイ」

冬獅郎に指摘され言われても、
顔を反らしつつ離れようとしない。
冬獅郎の隣で同じように立ち尽くし
顔を反らし腕組して頬を膨らましている市丸。
その様子を見ずに冬獅郎は難題聞く。

「……お前はどう思う」

いきなり主語を入れずに問いかけた為
市丸は何の事か分からなくて拗ねた顔のままで聞返す

「何の事か分からんなァ…」

冬獅郎は雪を眺めながら呟く。

「……雪……」
「雪?」
「そう…雪だ。てめえはこの雪を見て
どう思う?どう感じる?」
「どうって…そやね…ボクは綺麗やと思うけどなァ…」

冬獅郎は市丸の発言を耳にした後、
先程までの険しい顔ではなく
切なさを帯びた顔つきになってこう言う。

「“綺麗”か…」

様子が変だと気づいた市丸は
拗ねるのをやめていつもの顔で尋ねる

「急にどないしはったの、日番谷はん」
「……“綺麗だ”と思うのは…きっとてめえだけだ」
「え?何でなん?普通に綺麗ですやん。
こんな綺麗な雪を見て“汚い”だの“嫌い”だの、
そんな事言う奴なんておりまへんやr─
「居るから言ってんだろうがッ…!」

突如冬獅郎が大きな声でそう叫ぶ。
その時の冬獅郎はいつもより鋭い目付きで
どす黒いオーラが染み出ていた。
その姿とその声に市丸は驚き言葉を失う
冬獅郎はそのあと何も発さないまま
何処かへ行こうとする。
それを市丸が呼び止めようとするも─

「…日番谷はんッ…待って〜な…何処行くn─」
「来るんじゃねえ…ッ…!!」
「ッ……!」

今までの中で一番と言って良い程
凄まじい霊圧でこれはアカンと思った市丸は
言葉をかけようとするのをやめた。
すると冬獅郎は一瞬切ない顔をしてから
背中を向けて何処かへと歩いていった。
市丸はその場に座り込む。
そこへ十番隊副隊長かつ市丸の幼馴染みの
松本乱菊がやってきて市丸に話しかける。
話しかけられた市丸は冬獅郎について尋ねる

「あら、こんなとこで何してんのよギン」
「……なァ乱菊、質問してもええか?」
「いいわよ?」
「……日番谷はんの事なんやけどな…」
「なッ…ギン…あんたまさか隊長を狙って─」

市丸が冬獅郎の名前を出した瞬間
乱菊は目をかっぴらき、
まさかあんた隊長を狙ってんの!?と
聞こうとするも市丸がそれを途絶えさせて

「今それどころやないねん。真面目に聞いて」
「わ、わかったわ…」
「ありがとうな。ほんで日番谷はんやけど
乱菊、昔の日番谷はんの事知らんか?」

市丸は昔の冬獅郎について聞き始める。
乱菊は首を傾げながら答える。

「昔の隊長を?ん〜…そうねえ…今と変わらず
生意気だったわね…なんでそのような事を?」

そしてどうして?と質問返しをする。
市丸は険しい顔になり話し出す。

「……なんか日番谷はん、
冬に降る“雪”を毛嫌いしとるみたいやねん」
「隊長が雪を…?そんな事ないわよ
だって隊長の斬魄刀は雪塊と同様の氷、氷輪丸なのよ?
隊長がそんな雪を毛嫌うだなんて…」
「ボクも最初はそう思うてたんや。
せやけどあんな日番谷はんは初めてやで。
『“汚い”だの“嫌い”だの、そんな事言う奴なんておりまへんやろ』って最後まで言おうとしたら
いきなり血相変えて怒鳴りはったんや」
「血相を…?なんでまた…」
「それが分からんのや。いくら考えても分かるのは
過去に何かが遭ったって事だけや」

其処から二人の会話は途絶えて
二人ともその場で立ち尽くしたまま
脳をフル回転させてひたすら考える。
二人が考えているところにとある人物が訪れる。

「二人して何してるの??」


....
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