BLEACH

□温泉にて桃桜乱【前篇】
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【瀞霊廷side】
十番隊舎に未だに残っている者が居た。

「誘ったのはいいが…アイツは来るのか?」

一護を誘った張本人の冬獅郎だった。
冬獅郎は待ち合わせ時間の半時間前になると
大抵は待ち合わせの場に居る筈なのに、
現在半時間前になっていても
その場から全く動こうとしない。
準備はと言うと完璧に出来ている為、
いつでもいける状態である。

無言で自室にて待っていると
一つの霊圧が此方へ向かってくる。
これはもしやと思い冬獅郎は襖を開ける
其処にはゼェゼェと息を切らしながら
大きなカバンを身に纏った一護が居た

「ッ……黒崎…」
「よっ!約束通り此処に来たぜ、冬獅郎」

冬獅郎は内心嬉しかったがいつもの癖でこう返す。

「冬獅郎じゃねえ、“日番谷隊長”だ」

その台詞に二人は顔を合わせてプッと笑い合う。
も、冬獅郎はすぐに顔をいつものように眉間に皺寄せ

「ッ……!………黒崎、行くぞ」

冷静さを保っているように見せる為
いつものように冷たく言い放つ。
それに対し一護は一瞬悲しい顔をし
またすぐにいつもの顔つきに戻して

「ああ」

と答えて冬獅郎の後を追う。
一護は何故かこの時胸が痛んだ。




【やちるside】
乱「はぁ…はぁ…流石やちるね…」
卯「は…速すぎますわ…ッ…」
市「はぁっはぁ…こんな速いとは…思わんかったわ…」
藍「これだと…キミも速さトップクラスに
入れるのじゃないのか……?」

五人で鬼ごっこするとき
四人が鬼でやちるが逃げる役であった。
四人がかりなら流石にやちるのことを
捕まえられると思っていたものの
いざ試してみると速い四人はクタクタになっていた。

「も〜みんな遅いよ〜」

やちるはどうやら満足ではないようだ。
やちるは手を抜いていたらしいが、
それでも捕まえられなかったのだ。
と、そこに霊圧を消していた何者かが
やちるの肩にポンと手を置く。

「…お前の敗けだ」
「えッ…!?」

そう言ったのは冬獅郎だった。
やちるは冬獅郎にされた事が気に食わないようで

「そんなの無しだよ!!
ひっつん、鬼ごっこに参加してなかったでしょ!?」
「確かにそうだが“全員が集まるまで”だろ?」
「え?なんで知ってるの?」

冬獅郎は乱菊に目を配る。
実は鬼ごっこを開催する前に乱菊はやちるに
バレないように冬獅郎に地獄蝶で知らせていたのだ。

「そうだったんだ〜それでもいいや!!」
「!…い、いいのか?」
「うん!その代わりひっつんあたしと鬼ごっこしよ!」
「「え」」

……

二十分後


「はぁッ……はぁッ……はぁッ……」
「あ〜負けたああッ…!!」

二十分間も二人は瞬歩を使わずに
ガチの鬼ごっこをしていたのであった。
勝者はなんと冬獅郎だった。
四人は本気で走っても無理だったのに
冬獅郎は何とかタッチが出来たのだ。

「…はぁッ……はッ…お前速すぎんだろ…」

冬獅郎はこれから旅行に行くと言うのに
全力で走り回った為ぐったりとその場に倒れこむ
そこへ一護が近づき声をかける。

「おい…大丈夫かよ冬獅郎…」
「…ッ……“日番谷隊長”だ…ッ…」
「はぁ、こんなときまでお前は…」

いくら疲れていても冬獅郎は
“日番谷隊長”だと言う台詞を忘れない
二人が近距離で見つめ話してる姿を
四人は隠れてニヤニヤしていた。
そこに乱菊が我慢ならなかったのか
一護の背中をポンと押す。

「え、ちょ、ま」
「…?お、おい…ッ…黒さ───」

ドサッ…!

「んッ」

一護は倒れないように必死に抵抗するも
力の向きには敵わずそのまま倒れる。
倒れた瞬間冬獅郎の口から声が漏れる
一護はいてててと言いながら
近くにある物に手をしがみつかせる。
その度に冬獅郎の口から甘声が漏れる

んぅッ……おい…黒崎ッ……」
「……え?」

一護は気づかずに近くにあるモノに
しがみつきながら体を起こす。
するとそのしがみついていた場所は

「………黒…崎………ッ」
「ッ!?!?」

冬獅郎の大事な部分だった。
今まで一護は気づかず揉み握っていた
一護は慌てて放して背中を向けながら

「わ、わ、わりぃ!!」

と謝る。冬獅郎は顔を赤く染めて
不機嫌そうな声で返す。

「……別に…」

その様子を見ていた四人は興奮していた。
そして小声で妄想会議を行う。

「ちょっと何あれ最高だわ」
「あれは見事に誘ってますわね」
「死神代行くん、えらい大胆や」
「日番谷クンは感じていたね」

一方一護は冬獅郎に背中を向けたまま
冬獅郎は顔を真っ赤にしたまま
言葉を失って体育座りをしている。
其処に織姫と七緒がやってくる。
待ち合わせ時間まで後五分となり残りはネムのみ。

それから二分後にネムだけが来たのかと思いきや

「待たせて済まないネ」
「これは楽しそうになりそうじゃ」

冬獅郎に存在を忘れられていた二人
マユリと総隊長がネムと一緒にいた。

「総隊長!?」

冬獅郎は顔を戻して立ち上がり
総隊長等の近くまで移動する。

「おお、日番谷隊長よ。
わしもこの温泉旅行に加わってもよいかの?」
「え、あ、はい…」
「私も一緒に行かせてもらうヨ」
「おい、何お前は行くこと前提になってんだ」

総隊長は行ってもいいかと許可を
貰おうと発言をしたものの
マユリは行くことを知らせただけ。
それに対し冬獅郎は突っ込む。
その様子を一護は切ない顔で見つめていた。

「もぉ!!取り合えず行こうよ!!
このままだと日が暮れちゃうよ」

やちるが大きな声で皆を黙らせる。
みんなは、は〜いと我に戻り
荷物を持ってやちるの前に集まる。

「…えへへ!てことで
桜見温泉旅行にしゅっぱーつ!!」

こうしてやちるが道案内をして
死神陣で桜見温泉旅行に旅立った。


前篇終了.
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