獄都の館にて

□憑かれる方と疲れる方
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「!?」
突然平腹の体がよろめき、膝を折った。
「平腹!おい」
「やっべ…なんか…殺すって…聞こえる、オレ…殺される…たが、み…」
涙混じりに平腹は訴える。
怨霊が直接平腹に話し掛けているらしい。
多分、今日の任務で殺した怨霊がまだ観念していなくてついてきてしまったのだろう。
獄卒は滅多なことでもなければ怨霊に取り憑かれない筈なのだが。
「ちっ…」
まさか休日がこうなるとは。
でも、苦しんでいる平腹を放っておくわけにはいかない。
怨霊を投げ、蹴り、鎖で縛り上げて平腹から出来るだけ隔離しようとした。



さすがにこれで観念したらしい怨霊達は、もう二度と誰かに迷惑を掛けないという条件で赦してやった。
「とんだ災難だったな…次からは自分に憑いた霊くらい自分で祓えよ」
「そーする!」
先程までの闇は何処へやら、平腹はいつもの笑顔で言った。
…他人の苦労も知らずに。

でも、案外そんな平腹が好きな自分がいた。

end
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