獄都の館にて

□女装選手権
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「第9587回!女装選手けええええん!!」
「「いえーい!!」」

待て。
待て待て待て。
「お前ら…今何つった?」
「女装選手権!やるよ!」
「まだやるとは言っていないぞ…」
普段は真面目に喝を入れるはずの佐疫まで妙に積極的だ。
そう指摘したいのだが、最早重大なのはそこではないのだ。
「女装…女の格好して街歩く奴か?」
「それそれ!さっすが!田噛は飲み込みが早いねぇ!」
上機嫌な木舌に頭を撫でられたが、なんか、然程嬉しくない。
平腹は平腹で衣装揃えてるし何なんだこの空間は。
「貴様ら…そんな阿呆な真似をしている暇があるなら鍛練するか仕事を探せ」
谷裂も全く乗り気じゃないというかこいつは多分鍛練したいだけだ。
斬島は若干空気を読んだのか読んでないのか黙り込んでいる。何か喋れよ。
「ちなみに優勝条件は最後まで獄都の住民に正体が割れないこと!商品はキリカさんのフルコース料理!あ、住民達には既に事情説明済みだから安心してね!」
「安心とか言う前に開催しないという選択肢はないのかよ」
佐疫は俺の発言など完全無視で進行している。なんて日だ。
「意外とある!20枚くらいあるぞ!」
「お疲れ平腹〜。じゃあまずは斬島からだね!」
斬島に一斉に向けられる目。
本人は全力でお断りする姿勢だが、平腹に押さえつけられて連行されていった。

…このままじゃ終わる。
色々、何というか…プライドとか。



数分して、斬島は白いブラウスに赤のミニスカート、黒いタイツという現代的な服装をして更衣室から出てきた。
似合いすぎて驚いた。
「お前ら絶対殺してやる…」
当の本人は殺る気満々。全く女子に似合わぬ状況ではあったが、顔立ちは相当端麗で服装に相応しているような気もした。
「じゃ〜次は田噛かな?」
「…」
無言で椅子から立ち上がり、一人で逃げようとしたが何故か部屋の鍵が開かない。
観念して、大人しく従っておくのが最善と判断し、俺は平腹達のところへと向かった。



「…何なんだこれ」
用意された服は、男が着るには羞恥を伴うものが大半だった。
短いスカートの多さと露出が多い服の多さ。絶対狙っただろこいつら…
「こんなのもあるよ?」
佐疫が長いスカートを提示してきた。
…足が出なきゃいい。
そんな程度の思いでそれにすると言うと、
「これセットね♪」
とノースリーブのシャツを出してくる。
この組み合わせは絶対おかしい。
それが嫌ならミニを穿けってか。お前ら足見たいだけか。

今日は悪い意味で面白い一日になりそうだ。
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