獄都の館にて

□憑かれる方と疲れる方
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俺はその日非番で、仕事もなくのんびりと暇な時間を過ごしていた。
眠ろうとしても眠りすぎかなかなか寝付けず、少しばかり腹を立てて館の外周を一回り歩こうと思い付いた。
日が傾き始めて赤色に燃え始めた頃、全身に土汚れのようなものをつけた同僚が仕事から帰ってきた。
「たがみ〜!!たっだいま〜!!」
「うるせぇ…お前服汚れすぎだ」
「外で亡者追っかけてたら転んだ!」
平腹は派手に転んだらしい割にけろっとしていた。
いつものことだろう、気にすることもないと脳は言った。
だが、少しだけ、気にかかることがあった。


「お前、さっきから後ろに誰かいんぞ」

「え、マジ?」
平腹は大袈裟に振り向く。
こちらに向き直ると、
「別に何もいねーぞ?」
「はぁ?お前見えてねぇのか?」
平腹は、怨霊に取り憑かれた者特有の陰湿な霊気を纏っていた。
「…うーん、そういやなんか頭いてーな…いっつもすぐ治んのに」
思い出したように、平腹は頭を押さえる。
その瞬間、怨霊はにたりと笑い、



『絶対 逃がさない』
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