獄都の館にて

□女装選手権
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「は〜い、エントリーナンバー2!田噛さん!只今ご登場で〜す!」
更衣室の戸が開けられ、うつ向きながら俺は部屋を出た。
「…え!?マジで田噛!?すっげー!!そこら辺にいる美人じゃん!!」
「うるっせぇ…!!お前ら覚えとけ…」
俺は白いYシャツに赤のベスト、青いミニスカートという格好をしていた。
斬島より待遇が酷いのは気のせいか。タイツ穿かせてくれなかった。
まずこんな身長高い女絶対いない。
もう死んだ。
「谷裂はどうする?やる?」
「断固拒否だ!誰がやるかそんなこと!!」
何故谷裂には聞いて俺らは強制参加なんだ。
「まー谷裂坊主頭だしね」
「殺すぞ」
「平腹と俺はやるから平気だよ〜」
何が平気なんだよ!
肋角さん助けてください!!


なんて祈りは水面の底に沈んだ訳だが。
さて、とりあえずひたすら外を歩いたり飯食ったりするか。
行きつけの店があるが…来たのがもしばれたら死ねる。
橙色の目とか俺くらいしかいねぇし。
やめとくか。
まずただの短髪の女に見えるようにするというのが無理じゃないのか?そこからだろう。
違和感はないらしく、住民がじろじろ見てこないのが不幸中の幸いだ。



「…ぅあ…何時だ…?」
公園のベンチで居眠りして3時間ほど経ったようだった。
現在時刻は正午を差している。
…腹減った。そこらの雑草とかを食っても腹壊さないからいいのだが、物足りない感じが後から来る。
どうしたものか。そこらの洋食屋でもいいが…
「ぜってぇばれる…」
意外と真面目にやっている自分に気付き、今更取り繕うように額に手を当てる。
この責め苦にあと何時間耐えろと言うのだ。佐疫も平腹も後でぶっ殺す。


結局何のオチもなく、日が沈んだので館に帰ることにした。
身バレしなかったのが唯一の救いか。
あとはもうプライドとかその辺り失った。
「あ、田噛お帰り〜」
「お帰りじゃねぇよお前こんなの唯の恥晒しじゃねーか死ね」
木舌にボディブローを食らわせて、早く着替えたい一心で自分の部屋に戻った。
私服に着替え、ひとまず落ち着いた。
そういや結局昼飯も夕飯も食ってない。腹減った…食堂漁れば何か出るだろうか。
食堂へと直行すると、何事か佐疫が笑顔でスタンバイしていた。
…嫌な予感。
「田噛、まだ着替えていいなんて言ってないよ?」
「もういいだろ…俺は食い物が欲しいだけだ」
佐疫を無視して行こうとしても、いい感じにバリケードとして機能していて上手く行けない。
段々腹が立ってきて、

「これ以上邪魔するな」


佐疫の断末魔が、夜の館に響いた。

end

あとがき

佐疫はあのあと田噛に拷問されました。

なんかもうごめんなさい。
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