3Z short

□相合い傘の魔法
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部活帰り。待ってもおさまることのない激しい雨が降っていた。俺はやっぱり、ね。と傘を差した。

ふと隣を見た。

時刻は19時。ほとんど生徒もいないこの時間に女の子が1人雨を見つめていた。親の迎えを待っているんだろうか。


「 あの〜〜、お迎えですか? 」


なんの理由もなく、女の子に話しかけた。女の子は苦笑した表情を俺に見せた。

「 それがお迎え来てくれなくて。バスで帰ろうと思ったけど、こんな雨だし。濡れるの覚悟でバス停まで走ろうかなぁ、って 」


確かにこの雨の激しさは10秒立ってもずぶ濡れだと思う。しかも…そんな白いセーラー服を濡らしたら、下着が透けちゃうんじゃないか。なんて女の子に言うのはセクハラか。

「 そんな事したら風邪ひいちゃうよ。俺の傘…大きいし、よかったらバス停まで一緒にいくよ? 」

見ず知らずの人に言われると驚くよなぁ。女の子はそう思うかの表情をしていた。

「 え、いいの? 」

「 うん、濡れるよりだいぶマシだと思うし、俺もバスじゃないけどバス停前まで歩くからさ 」

「 ありがとう! 」


すると 女の子は俺の傘に入っていった。屋根を過ぎると傘は激しい雨音が響いていた。初対面だろうか、雨音だけが聞こえて、自分達は無言だった。無言の雰囲気の中、バス停までたどり着いた。


「 山崎くん、ありがとう 」

「 なんで名前… 」

「 傘に書いてる 」

にこり と笑う彼女に俺は緊張感がふっとんだ。そういえば女の子とこんなに密着したり、相合い傘するのも初めてだったんだよなぁ。


初めての経験に嬉しくなった。




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