書 庫

□敵わぬ存在
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「お…だんご、………だよ。」









いつの頃からか、みちるははるかの温かいぬくもり無しでは安心して眠りにつくことが出来なくなっていた。

はるかとは共に戦い、共に傷付き、同じ過酷な宿命を担った同志…。

初めは慰めだったのかもしれない。

しかし、今ではそんな運命を優る程、二人は互いを深く愛し、求め合っていた。

そしてその夜もいつものように、みちるは愛するはるかと同じベッドで、はるかのぬくもりに包まれて眠りについていた。


だが、その時みちるは眠りが浅くなっていた。


「…う、ううん。」


それは額に手の甲を当て、はるかが眠る側へ寝返りをした直後だった。





「お…だんご、…………だよ。」





はるかが寝言で言った一言。

その言葉にみちるは一気に眠りから覚醒してしまった。

ゆっくりと瞼を開ければ、カーテンの隙間から優しい月明かりが漏れていた。

しばらくして目が慣れてくるとそっと手をつき、少し上体を起こしてみた。

隣のはるかの顔を覗き込んで見れば、その端正な美しい顔は、確かに幸せそうに微笑んでいた。



「はるか…。」



そう呟いた途端、胸の奥がキュッと締め付けられた。と、同時に次第に目頭が熱くなっていくが分かる。



『夢の中で貴女を笑顔にさせている方が、私だったら良かったのにな…。』


みちるは寂しく微笑んだ。


こんなにもお互いの呼吸が分かる程、近くにいる私達なのに…。何故だかはるかをひどく遠くに感じる時がある。



貴女は孤高の飛翔の戦士。


前世では他の誰よりもその崇高な使命に誇りを持ち、月の王国に忠誠を誓っていた貴女。

そして、その先には…



―プリンセス



私達セーラー戦士が命に代えてもお守りするお方、私達の希望の光。

私も同じくして忠誠を誓っている身。

競べることすら敵うはずも無い…。

私だってそれくらい十分承知している。


…だけど


私の心の中で、どうしようもなくこの黒く醜いものが蠢いている。


決して口には出せない想いがみちるを苦しめる。


みちるの美しい蒼の瞳がゆっくりと閉じられると、真珠のような珠の雫が、滑らかな頬をゆっくりと伝い落ちていった。
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