書 庫
□食後のデザート
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海辺に近いショッピングモール。その中に併設されている映画館を目指して僕は日曜の朝から愛車を走らせていた。
勿論、隣には愛しのみちる。
久し振りの外でのデートとあって、みちるは朝から張り切っておしゃれを楽しんでいたようだ。
淡い水色と白色のギンガムチェックのフレアワンピースに白のレースのリボンが揺れる王道のポニーテイル!
小ぶりでぷっくりとした可愛らしい唇にはいつもとは違った艶やかなピンクのリップ。
何だかいつもよりも…
『…ヤバイ、可愛いすぎる////』
僕の頬は朝から緩みっぱなしだった。
ところで今日はみちるのリクエストで、恋愛映画を鑑賞することになっていた。
正直、僕は恋愛映画なんてまるで興味はないんだけど…
みちるの喜ぶ顔が見たいが為に、僕はただひたすら走るだけさ!!
映画がいざ始まると僕は始めこそはちゃんと本編を追っていたのだが、次第に瞳は隣のみちるへと奪われていた。
今、みちるはその甘く切ないストーリーの世界に浸っている。コロコロと変わる表情が何とも可愛らしくて、思わず抱き締めたくなってしまう。
『みちるってけっこう感情豊かなんだな。』
新たな発見に僕の心は躍る。
孤独な戦士の宿命を背負った僕達は、様々な感情を押し殺し、使命を果たすためだけに戦ってきた。
以前、船上パーティーで人嫌いと云われていたみちるだったが、しかしこうして眺めていると、元来みちるは社交的で誰とでも気さくに話せる人なんじゃないかと僕は思う。
使命を果たした今、"少しでも君の普通の人間としての自由を取り戻せたら"そう願わずには要られなかった。
その美しい横顔を見ながら、
『何があっても必ず君を守ってみせるから…。』
僕は密かに心に誓ったのだった。
☆
映画館を出ると、時計の針は11:20を指していた。まだお腹は空いてはなかったが、ここがショッピングセンターということもあり混雑することを想定し早めに昼食をとることにした。
「みちる、何か食べたい物はある?」
「そうねぇ、特には…はるかは何か食べたい物はないの?」
「う〜ん…」
迷いながら、二人レストラン街を見て回る。
しばらくして、僕は有るものに目が留まった。
「…みちる、あの店が良いな。」
そしてその店を指差すと、みちるは何だか不思議そうな眼差しで
「…ビュッフェ?別に良いけど、はるか、そんなにお腹空いていたの?」
「あっ、いや、何て言うかあれが食べてみたいなってね////」
みちるがもう一度、指差す先を覗いて見る。
「…チョコレート?」
店の入り口付近に設置されているデザートコーナーの中央には高々と聳え立つチョコレートファウンテンが…
みちるは「まぁ。」とクスリと微笑み、
「はるかってほんと甘い物が好きなのね。良いわ、ここにしましょう。」
みちるがはるかの右腕に自分の両手を絡ませると、二人は寄り添うように店内へと入って行ったのだった。