書 庫
□外部家にて
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外からエンジン音が聞こえてくると、ほたるは、待ってましたとばかりに勢いよく外へと飛び出して行った。
はるかが愛車で待ち人を連れて帰って来たのだ。
「おはよう、ちびうさちゃん!うさぎさん!」
「「おはよう!ほたるちゃん!」」
ちびうさと両手でタッチし挨拶をすると、ほたるはそのままちびうさの手を取り玄関へと案内した。遅れてうさぎもその後に続く。
扉を開けるとほたるは「さぁ、どうぞ。」とニッコリ笑い、二人に入るよう促す仕草をした。
「ありがとう、ほたるちゃん。お邪魔しまーす。」
三人が玄関に入ると、直ぐに笑顔でせつなが出迎えた。
「いらっしゃい、元気にしていましたか?スモールレディ?」
「プー!!会いたかったよー。」
顔を見るなり思わずせつなに飛び付いたちびうさに、まるで母親のような面持ちのせつなが、ちびうさの目線と同じくするように身を屈め、
「私もですよ、スモールレディ。よく顔を見せて下さい。あぁ、また背が伸びましたね。…元気そうで何よりです。クイーンとキングはお元気でお過ごしですか?」
せつなは今にも溢れ出そうな想いを懸命に笑顔で堪えた。
「うん!二人とも元気だよ。みんなにもよろしくって!」
二人が感動の再会を果たしていると、奥からみちるが顔を出した。
「お久しぶりね?ちびうさちゃん。」
「みちるさん!おはようございます。」
「おはよう。小さなプリンセス、また貴女に会えて嬉しいわ。」
みちるが優しく微笑みかけると、ちびうさは少し恥ずかしそうに「えへへ ////」と笑った。
「うさぎも良く来てくれたわね。どうぞ中に入って?」
「私までお邪魔しちゃって…ありがとうございます!これ育子ママが作ったアップルパイなんですけど…」
「まぁ、ありがとう。すぐにお茶の用意にするわね?」
☆
お茶を飲み終えるとほたるは、ちびうさに小さな包み紙を手渡した。
「これ、ちびうさちゃんをイメージして私が作ったんだけど…ちびうさちゃんにあげる!」
「私に?ほたるちゃん、開けても良い?」
頷くほたるを確認して、ちびうさは丁寧に封を開けそっと中身を取り出した。手にしたそれは、透明ピンクのシリコンゴムで編まれたブレスレットで真ん中にはぐるりと濃さの違うピンクのビーズが交互に飾られていた。
「わぁ、かわいい!ありがとう、ほたるちゃん!」
左の手首に早速付けてみる。
「今、学校で凄く流行っているのよ。」
「そういえば、クラスの女の子達が鞄とかにこういう感じのつけてた…」
「そうなの、ネックレスやカチューシャ、ストラップとか自分で色々アレンジできるのよ。それでね…」
ほたるはここで一度言葉を区切り、何故かせつなへ目配せした。
せつなは頷き微笑むと徐に立ち上がり、後ろの棚の上段から一つ箱を取り出し再び戻って来ると、それをちびうさへ手渡した。
「ほたると同じものですよ。私からスモールレディにプレゼントです。ほたるに作り方を教えてもらうと良いですよ。」
「あっ、ありがとう!プー!」
大事そうに箱を抱き締めるちびうさに
うさぎも嬉しそうな眼差しで、
「良かったわね、ちびうさ。せつなさん、ほたるちゃん、ちびうさに素敵なプレゼントありがとうございます!」
「いえ、ただスモールレディの喜ぶ顔が見たかっただけですから…」
「私達もほたるに色々作って貰ったのよね。ちびうさちゃんも沢山可愛いらしいアクセサリー作ってみてね。」
みちるの言葉にちびうさも、
「うん!ほたるちゃん、私に教えてくれる?」
「もちろん!それじゃあね…」
ほたるとちびうさが楽しそうに作業をし始めるのを見届けるとみちるは、
「それじゃ、私もそろそろお昼の仕度にかかろうかしら。はるか、手伝って下さる?」
「あぁ、何なりと。お姫さま。」
「あっ、みちるさん!あの、私も何か手伝いますよ!」
「あら、良いのよ。うさぎは今日はゲストだもの。気にしないでゆっくりしてらして?せつなも今週は残業続きだったんだもの。今日ぐらいはゆっくり楽しんでらして?」
みちるは軽く首を傾げ微笑むと、はるかと共にキッチンへと消えて行った。
「それじゃ、今日はお言葉に甘えてゆっくりさせて頂きましょうかね。下手に手伝って、あの二人に当てられて胸焼け…なんてご免ですからね。」
苦笑いするせつなの言葉に、チラリとキッチンを伺ったうさぎ。瞬く間に頬は赤らみ、
「//// …納得。」
☆
リビングでほたるとちびうさはせっせと輪ゴムを編み上げ、ローテーブルの上には出来上がった作品がいくつも並べられていた。
其処へはるかの声が聞こえてきた。
「お待たせ、お昼の用意が出来たよ。」
先程から随分と食欲をそそる香りがリビングまで届いていて、うさぎの胃袋は空腹でそろそろ限界寸前だった。
「待ってました!」とダイニングへ跳んで行くと、そこには品の良い皿に綺麗に盛り付けられたローストビーフやサーモン・アボカドのサンドイッチ、シーザーサラダ、ミネストローネにキッシュ、フルーツの盛り合わせ等がテーブルいっぱいに並べられていた。
「うわぁー、凄い!まるでホテルのレストランみたい!どれも美味しそう!」
「お口に合うか分からないけれど…さぁ、皆で戴きましょう?」
「これはまた随分と腕を奮いましたね。」
みちるに微笑みながら、最後にせつなが席に着くと、程なくして一斉に
「「「いただきます!」」」
楽しい昼食タイムが始まったのだった。
「みちるさんって、ヴァイオリニストなのに包丁とか平気で使っちゃうし、本当何でも出来ちゃうんですね。尊敬します!」
「尊敬だなんて…でも料理するって言うとよく驚かれるわね。もちろん手を傷つけないよう十分気は付けているわよ?でも料理って創造力が掻き立てられるというか、多分作曲するのと似ているのかも知れないわ。楽しいの。良い気分転換にもなるしね。それにね、今は一緒に食卓を囲める大切な家族がいるから…。美味しいって喜ぶ顔が見たくて…それってとっても幸せなことよね。」
「みちるママ…」
「そうですね、みちるの言う通り本当に私達は幸せですね。」
前世では月から遠く離れたそれぞれの星々で孤独に戦い続けた外部太陽系セーラー戦士。
時を越え、再び巡り会った私達は今一つ屋根の下で肩を寄せ合い暮らしているのだ。
「私達が今幸せに暮らせているのは、うさぎ、貴女のおかげよ。心から感謝しているわ。ありがとう、うさぎ。」
「えっ。」
一瞬、訳が分からずきょとんとしていたうさぎだったが、皆に見つめられると、
「…えへへっ ////」
頬を人差し指で掻きながら、照れて赤くなるうさぎなのだった。