書 庫
□甘えさせてあげる
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心地好い温もりのなか、目が覚めた。
こんなにもスッキリとした目覚めは随分久しぶりのような気もする。
それもその筈、みちるがこの部屋で僕とベットを共にするのは実に三ヶ月ぶりなのだ。
隣ですやすやと眠る碧髪の美しい愛しい人を改めて確認すると、僕の心は忽ち圧倒的な幸福な気持ちで埋め尽くされた。
世界でもその高い技術力と美貌で人気を誇るみちるは、今回念願叶ってヴァイオリンの単独でのヨーロッパ四大都市公演を成し遂ることになったのだ。
出会ってから一緒にいるのが当然のようになっていた僕達にとって、これが初めての長期の別れとなった。
みちると遠距離になることは僕にとってかなり精神的にきつい事だったが、それよりも僕はみちるの夢を叶えてやりたかったのだ。それは僕にとっても大切な夢だったから…
もちろん三ヶ月もの間一切会わないなんて僕が耐えられるはずもなく、クリスマスには一日早くサプライズでみちるの元を訪れ十日程充実した時間を二人で過ごしていたんだけどね…
しかし一月にレースを控えた僕は泣く泣くまた一人帰国することになり、そして今日に至ったのである。
それでも二十日以上みちるに触れていなかったのだ。
伏せられた長い睫毛、桜色に染まる頬、プルンとした柔らかそうな唇。
突然どうしようも無くみちるに触れたい衝動に駆られた僕は右手をそろりと伸ばしたが、一方で疲れたみちるを起こしては可哀想だと自制する気持ちとで一瞬揺れ動いたが、結局あっさりと欲望が勝った。
頬に触れ、柔らかい感触を感じる。
『…ん?』
そう思った瞬間、みちるの美しい澄んだ瞳がゆっくりと開いた。
「あっ、ごめん。起こしちゃったか。」
「…は、るか、…おは…よう。」
微笑むものの、まだ気だるそうだ。
「おはよう、みちる。」
そう言って今度は遠慮なくみちるに口付けた。
「…やっぱり。みちる、君熱がある。」
「え?」
「きっと疲れが出たんだろう。みちるは完璧主義者だからね。頑張り過ぎてオーバーワークだったんじゃないのかい?それとも、昨夜は愛し過ぎて無理させちゃったかな?」
ニヤニヤと含み笑いで頬を撫でてやると、みちるは瞬く間に耳まで真っ赤に染まり、
「…ばか////」と枕に顔を埋めてしまった。
『ああ、本当みちるは可愛いな!』
思わず身悶えそうになったが、ここは何とか理性を保った。
「取り敢えず、冷やす物と何か飲み物持って来るよ。ちょっと待ってて。」
起き上がりベットから出ようとしたが、みちるにパジャマの袖を引っ張られ静止した。振り返り、
「…どうした、みちる?」
「…何も…何も要らないから…傍にいて?」
熱で潤んだ瞳で見上げられ、
『////ああ、もうっ!そんな可愛い顔でお願いされたら…』
はるかの理性は今度こそあっという間に吹き飛び、再びみちるを思い切り抱いたのだった。