dream

□桜よ咲け
1ページ/1ページ


「わあ、綺麗」
甘い声が耳元をくすぐる。
ちょっと首を傾けて彼女を見ると、目をキラキラさせて桜を眺めていてとても可愛らしかった。
「早咲きなんスってね」
「うんっ。品種改良で、卒業式に合わせて咲く話なんだって」
淡いピンクの花弁が上品にひらひら散っている。
「入学も良いっスけど、卒業式も良いっスよね」
「ね、私も思ったっ」
白く細い手が桜に手を伸ばす。
淡く色づいた唇が春の空気を吸い込むように小さく開く。
豊かな肩より少し長い黒髪が、甘い匂いをふわりと漂わせる。
今まで付き合ってきた女の子とは違う、優しい甘い匂い。
「リラっち...」
「なあに...」
グッと引き寄せると、バランスを崩した彼女がオレの腕の中に倒れ混んだ。
ギュッと抱きしめると、華奢な身体が一瞬驚いたように強ばり、おずおずと身体を預けてきた。
「また、来年も一緒に桜、見よう」
「うん」


桜よ咲け
ただ静かにオレたちを祝福してくれ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ