dream

□A happy sound to you
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今日は嫌な事ばかりだった。
「はあー、疲れた...」
小さく呟き、屋上のドアを開ける。
ふわっと夏らしい風が吹き、私は目を細める。
「あーーー」
マイクテストのように声を出して、腕をバタバタ振る。
嫌な事、飛んでけ。
「...何やってんスかリラっち」
「うわあっ!?」
いきなり背後から呆れたような声がして、飛び上がる。
「き、黄瀬くん!」
「どーもッス」
クスリと笑って、彼は私の顔をのぞきこむ。
「で?何してたんスか」
「うー、何でも...」
「嘘はダメッス。それー」
「きゃー!」
擽られ、息たえだえになりながら2人で倒れ混む。
「...あはは」
思わず笑ってしまう。
「おっかし、黄瀬くんたら...」
「嫌な事、あったんでしょ」
「...バレバレ?」
「バレバレですうー」
クスクス2人で笑ってから、そっと指を絡める。
「うん、あった」
ポツリと呟くと、黄瀬くんが微笑む。
「じゃあ、素直な恋人にご褒美ッス」
「ご褒美?」
「リラっちに愛を込めて」
囁かれ、軽く口づけをして...。
彼はそっと歌い出す。
遠い異国で作られただろう、甘い甘いラヴソングを。
「...ありがとう。幸せ」
「光栄ッス」
「ねえ...アンコール、お願いできますか」
「もちろん。リラっちなら、いくらでも」
今だけは、幸せな音に酔いしれたい。
大好きな貴方が紡ぐ、幸せな音に。





タイトルは
「幸せな音を貴方に」
という意味です。

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