dream

□wind
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いつの間にか、耳元を通り抜ける風の音は消えていた。


目を覚ますと、頭を撫でていた優しい心地好い手が止まった。
「起こしちゃった?」
「ううん。」
瞬きすると、ふんわり揺れる黒髪が目に入る。
もう一回瞬きすると、優しい笑顔。
「リラっち」
本能の赴くまま手を伸ばして頬に触れると、くすぐったそうに笑った。
「黄瀬くん、そろそろ昼休み終わっちゃうよ。教室帰ろ」
「あー…、うん。そーッスね」
どうやら、屋上でひなたぼっこしているうちに彼女の膝枕で寝てしまったらしい。
その間、オレの髪をすきながら読書をしていたらしい彼女は、ふんわりと笑った。
「ほーら、そろそろおりて。立てない」
「んー、もうちょっと」
「もう。甘えんぼだね、今日」
モデルの仕事と部活で、最近忙しかった。
唯一の癒しである彼女とも、当然なかなか会えなかったわけで。
「…授業、サボりたいッス」
怒られること覚悟でそう言うと
「…私も」
思いがけない言葉が返ってきた。
日光が柔らかく照らす。
「寂しかった、リラっち?」
「…うん」
素直な返事。
「…声が、聞きたかった」
「何度でも。好きッスよ」
「抱き締めて欲しかった」
「ん」
起き上がって抱き締める。
「キス、して欲しかった」
「もちろん」
甘く唇を重ねる。
「愛してる」
「私も。愛してる…」


いつの間にか、ずっと聞こえていた風の音が聞こえなくなった。
何もかもの冷めていた、あの頃の音。
全力で夢中になれる、モノに出会えた。
心から愛する彼女に出会えた。
自分が必要とされる居場所を見つけた。
「オレ、将来は本気でモデルやろうと考えてるんス」
「うん。応援する」
「ありがとう」
「彼女ですから」
彼女は冗談めかして笑う。
その隣に、いつまでもこの人がいれば、どんなことでも耐えられる。
そう思って、優しく強く彼女を抱きしめた。




こういう甘い感じでやっていきます宣言w
私の中でのこの二人のイメージは、退屈でたまらなかった黄瀬くんの世界を変えたバスケで繋がった、全てを受け止めて愛してくれる人です。
決して、特別なことは何もないけれど、側にいると安心する、暖かい人。っていう感じ?です

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