逆転裁判

□はじまり
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「これより、被告人西早比人の審議を始めます」

裁判長の宣言が高らかに響き渡り、事件について審議がどんどん進んでゆく。

今回の事件はとある殺人事件。

弁護側の主張を次々と潰してゆく検察側。

しかしやり方はかなり破天荒で、荒々しく、時に冷静に法廷の流れをつかんでゆく。

「異議あり!犯行当時、凶器は別の場所にあった可能性も……」

「黙りなァ!」

底から響く低音声が弁護側の主張を遮る。

肩を少しだけ震わせながらも内心その迫力に魅入る律歌。

一瞬たりとも見逃したくなかった。

「可能性はあくまで可能性だ。そもそも凶器が他の場所にあったって証拠はねェ、そうだろう?」

途端にうっ、と詰まる弁護側。

なんて上手い手なのだろうと律歌は思った。

検事が得意とする心理操作、というやつらしい。

またしても流れを自身に有利な方向にしてしまった。

それに対して弁護側は食い下がろうとする。

その時、鳴き声を響かせながら検事の肩に止まっていた一羽の鷹が法廷を舞った。

鷹の鋭い爪に弁護側から悲鳴があがる。

法廷に住み着いていて、“ギン”というらしい。

結構大きいなぁ、などとぼんやり考えていると、視線に気づいたのかまっすぐ飛んでくるギン。

騒ぎ出す傍聴人達と慌てた様子の裁判長。

そんな人間達には目もくれず、ギンは律歌の膝に着地する。

試しに指を出してみてもギンが攻撃しないのを確認し、撫でると気持ちよさそうに擦りよるギン。

ギンを怖がるわけでもなく寧ろ目を細めて撫で始めた律歌に周囲は戸惑いながらも、落ち着きを取り戻してゆく。

その中で感じた射抜くような鋭い視線。

顔を上げた途端にまたぶつかる視線。

そこにはギンの主人である検事が、驚いているようでいて面白がっているような表情を浮かべていた。
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