story

□学パロ
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夕陽が差し込み、教室がオレンジ色に染まる

さっき校門で拾った桜の花をくるくると回しながら

俺はぼーっとグラウンドで汗を流す運動部を眺めていた



ガラッ



後ろから音がして廊下の扉の方を向くとそこには

綺麗な白髪に褐色肌のキミが立っていた



そこで俺はソーマに出会った________________________













今日から高校二年目が始まり

校門に着くとクラス分けの紙の周りには人だかりが出来ていた。



「おーいソーマー!!おっは!」

「...おはよう」

「なんだよ〜相変わらずテンション低いなーソーマは」

「お前が騒がしいだけだ」



オレンジの髪の毛と頭にしているバンダナが特徴的なこの少年はコウタ

ソーマの中学時代からの友達である。



「さーて、今年こそ一緒になれるかな〜〜〜?」

「さあな」



そう言い二人はクラス分けの紙を見る



「「あ」」



二組の欄には二人の名前が書いてあった



「一緒じゃん!!!やったな!」

「そうだな」

「なんだよその反応ー、本当はほっとしてるんだろ〜?」



ふん、と鼻をならすソーマにコウタはにやにやしながら肘で突くと

うるせぇ、とコウタの頭を叩いた

いでっ!っと情けない声がコウタから漏れる



「まったく容赦ねえな...って、ヒカルじゃん」



同じ欄に並んでいる名前を指さすコウタ



「(宮原ヒカル?)...誰だ」

「去年俺のクラスだったんだけどさ、一回も見かけなかったな〜。

小学校も一緒だったけどちゃんと見たのは多分卒業式だったと思う」

「学校に来てないのか」

「みたいだなー、すっげえ綺麗な赤髪だったから印象に残ってるんだけど」

「...そうか」



染めてんのかな?地毛かな?と話すコウタ

ソーマは特に気に留める事なくコウタの話を聞きながら教室へと向かった



始業式が終わり教室で先生の話をぼーっと聞いていたが

自分の前が空席な事だけが気になっていた



「〜〜以上が二組のクラスメイトだ、みんな仲良くするようにな

あ、ちなみに宮原ヒカルは事情で時々しか学校に来れないが

登校した時や見かけた時はみんな話しかけてやってくれ」



じゃ解散〜

そう言う先生にみんなは軽い返事をし教室は一気に喧騒に包まれた







時々頼まれるコウタの部活の助っ人に行っていたソーマ

いつの間にか夕暮れになっていた。



「あー今日もお疲れ!なぁーソーマもバスケやろうぜ〜!」

「断る」



ちぇーっ勿体ねえ〜と項垂れるコウタを無視し音楽を聞こうと

ポケットを漁ったが見つからなかった



教室に忘れて来たか...

チッっと舌打をするソーマ



「お?どうしたんだーソーマー?」

「教室に忘れ物した、先に帰ってていいぞ」

「あーわかったーじゃあな〜!」



ぶんぶんと手を振り走り去るコウタを見送る

踵を返し教室に向い歩き出すと

春風と桜の花びらが頬を撫でた





ガラッ



教室の前に着き扉を開けると、驚いた顔でソーマを見つめる赤髪の少年が座っていた



「(俺の前の席は確か)...宮原...ヒカル...」

『エッ...』



呟いたはずがヒカルには聞こえていたようで

さらに驚き目をぱちぱちさせた

ソーマは気にせずにその後ろの自分の席へと向かう



「(あった)」



机の中に手を入れると音楽プレイヤーが指先に触れた

それをポケットに入れ 前を向くとヒカルがこっちを向いていた

外から差し込む夕陽と同じ色の綺麗な瞳と目が合う



『な、なあ』

「なんだ」

『ええっと、なんで俺の名前知ってんの?』

「...今日担任が言ってたからだ、あと、俺の友達に少しお前の事を聞いた」

『あ、そうなんだ...』



ソーマがそう言うとヒカルは頬を掻き照れたように笑った



「お前は、なんで学校に来ないんだ?」

『随分直球だなぁ...来ないんじゃなくて、来れないんだよ』



声のトーンが一つ下がったヒカル。

目を伏せ手に持っている桜を見ながら呟いた

ソーマは自分の机に腰掛ける



『俺さ、体が弱くて毎日学校に来れないんだ、その日によって体調が違うから。

去年はずっと体調が悪くて来れなかったんだけど、今日始業式だから頑張って来たんだ』

「そうか...今年は通えそうか?」

『うん、なんとかね。』



笑顔でそう言うヒカル

話し方に嬉しさが溢れ出ているヒカルにソーマも釣られて口角が上がった





「俺はソーマ、ソーマ・シックザールだ」



腰を上げそう言って手を出すとヒカルは慌ててその手を握る



『お、俺は宮原ヒカル!よろしくな、ソーマ!』

「ふっ...ああ、よろしく、ヒカル」



自己紹介が慣れてないのかおどおどするヒカルにソーマは笑うと

ヒカルも照れたように笑った





探し物を見つけたソーマはヒカルからの誘いで一緒に下校することにした。

オレンジ色の夕陽が二人の影を伸ばしていた



『ソーマはさ、部活とか入ってないの?』

「いや、時々コウタの助っ人に行くだけだ」

『コウタって…あぁ、藤木コウタ?』

「知ってるのか?」



少し意外だった

学校には一回も来ていないと聞いたから

それとも、何かしらの接点でもあったのだろうか

そう、ソーマが思考を巡らせていると、ヒカルから返答があった



『だって、去年のクラスメートだったし』

「クラスメートって…学校に来てなかったんだろ?」

『あぁー、まあでも一応俺もクラスメートだし...』

「凄いな」



凄い、ソーマは純粋に思った

自分ならきっと会ったこともないクラスメートの名前なんて憶えない



『コウタは、小学校も一緒だったから、プリント届けてくれたりしたんだ、良い奴だよな』



受け取るのは母さんだったから顔は合わせてないけど

ヒカルは嬉しそうに笑いながらそう言った



「そうだな、アイツは良い奴だ」

『へへ...あ、俺こっちだ、ソーマは?』

「俺はあっちだ」

『そっかー、じゃあな〜』

「また明日な」

『……またな!』



「…最後まで、明日とは言わなかったな」



不安が頭を過る

杞憂だとは思いつつも、小さくなっていくヒカルの姿に声をかけずにはいられなかった



「ヒカル!また明日だ!」



ヒカルは驚いて立ち止まり、振り向き

一呼吸の間をおいて、ソーマに向かって叫んだ



『わかった!!』







最後に見た儚いヒカルの表情が目に焼き付いていた





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