灰色庭園

□雪色の君
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 「神田、雪ですよ」
なぜか俺の病室に居るもやしが嬉しそうにそう言った。
「うるせえ」
それをあしらいながら、俺もそっと窓の外を見る。
 透き通るような、ムカつくほど綺麗な雪が空を舞っていた。
「綺麗ですよね」
いいなあ、と、もやしが羨ましげにため息をついたのが見えた。
「雪遊びでもしたいんなら行って来いよ」
そういうと、ぱあっと笑ってもやしは外に飛び出した。
 ため息をついて俺も外に出る。
 どうせ誰かが見ていないと無茶をする馬鹿だ。面倒を見て恩を売っておくのも悪くないだろう。

 「あれ?」
外に出た俺に、もやしは不思議そうに首を傾げた。
なんでいるんですか、とでも言いたそうな顔だった。
「文句あるかよ」
「別にないですよ、ただ君が雪を見に外に出るのが意外だっただけです」
少し頬を膨らませて抗議をしてくる。
「俺はここで見ている。てめえはそこで遊んでろ」
それを聞いて、なぜかもやしは嬉しそうに笑った。

 どうしてこいつは、こんなに純粋に笑えるんだ。
 ここは戦場で、誰だってすぐに死んでいく。
 今傍にいるやつが明日いるとは限らないのに。
 だから俺はこいつが。
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