戯言遊戯

□とある戯言遣いの独白
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初めて零崎に逢ったのは5月13日の金曜日だった。


「じゃあ、あたしは先に帰るぜ」
一仕事終わって、哀川さんは楽しそうの笑いながらそう言った。
「助かりましたよ、哀川さん」
いつも通りぼくは哀川さんを名字で呼んだ。
「…だからあたしを名字で呼ぶやつは敵だっつただろ」
呆れたように哀川さんは肩をすくめる。
「すいません、潤さん」
それはいつも通りのやり取りで。

「あれ?そういやいーたん、零崎くんにはまだ会えてねえの?」
唐突に哀川さんはそう聞いた。
「まあ、メアドすら交換してないですから、あいつがどこにいて何をしてるかなんて、僕は知りませんよ。死んでなければ生きてるでしょう」
「確かにな」
ぼくの言葉に、哀川さんはシニカルに笑った。
「そのうちまた会えるだろうし」
「そうですね」

哀川さんと別れて僕はそっとため息をついた。
あいつとは二度と会いたくないかも知れないのに、きっと心のどこかでほくはあいつに会いたいと願ってるのだろう、と思いながら。
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