羊頭狗肉

□テンプレ 墜落 箱のなか
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「ではこれより卒業試験を開始する!」


団長と副団長が装備を完璧にこれからの行動の確認をとる

これからの卒業試験は実際の海上での戦いを実践的に行う

スノウを先頭に僕たち訓練生とグレン団長率いる先輩騎士達との海上戦争の練習

決して簡単なものではないけれど命を懸けない戦いは恐ろしいという感情の起伏は全く無い


けれど仮にも卒業試験

真剣に受けなければもちろん危険なことに変わりは無い

気を引き締めて試験に向かわなければーー。





というのは今の僕にはできなくて、
部屋に置いてきてしまったあの子がとても気になって仕方が無い


もしかしたら目が覚めて部屋から出てしまい、他の騎士団員に見つかって大変な事になっているかもしれない


そんなのを想像すると目の前で行われる試験に自分の全てを入れ込む事ができない








「じゃあまずは敵船に一定の距離を保ちつつ紋章弾で攻撃を加える。こちらの船には相手の攻撃が当たらないように仕掛けよう。」


スノウの管理の下に船を動かす

確かに、相手の攻撃を受けるのは好ましくないけれどこれは実戦を装う為の訓練

おそらく団長は攻撃を受けてもこの船に乗り込んでくるに違いない

臨機応変にならなくてはいけない試験
紋章弾の読み合いも大切だけど
最悪のパターンを引き起こそうとしてくるであろう団長たちの作戦では紋章弾のみの戦いだけで卒業試験を終わりにさせるとは思えない


「よし。ではケネス!先に決めた通り、紋章弾の管理は君に任せる。他は相手が動くまで自分の持ち場で一旦待機!」


「了解。」


スノウに指揮された通りに紋章弾の用意にケネスが甲板から船の内部に移動していった


「ラズロ。」


ケネスが居なくなったと同時にジュエルが声をかけてきた


「なんか緊張してきたねーホントに沈んじゃったりしないかな。」


「おいおい!止めろよなーっ。卒業試験まできたのにここで沈むとか格好つかねーにも程があるだろ。」

ジュエルの言葉にびっくりしていると会話を聞いていたのかタルが困った笑みをしながら最もな事を言った

事実、ここで船が沈むような事があったらもう一年間はこの鎧を着る事になるだろう
流石にそれはごめんだ


「それにしてもグレン団長、どう攻めてくる気だろー。」


両膝に手を乗せ少し屈みながら相手の船を見つめ、疑問を口にしたジュエルにつられるように僕も船を見た

予想もつかない。とまではいかないけどグレン団長の事だ、そう易々といかないのは確かだ


「そうだなー……。
まっ、スノウがやろうとしてる紋章弾だけの戦闘ってのは、まずないだろうな。」


「やっぱ、コレの出番はあるよねー…。」


ジュエルがタルの言葉を聞いて膝から手を離し、腰に固定されている武器をポンポンと叩いた


「でも、向こうが距離を詰めても作戦的にこっちが離れちまうけど……そしたらどうすんだろな。」


「スピードあげて思いっきり船にぶつかる勢いでくるかもね。」


冗談でそう言うとタルは、それはないだろ。と笑ったけど
ジュエルが肩を揺らして、うそっ!と船の縁に掴まった


「いや、冗談だよ冗談。」


「……もしかしたら冗談。に、ならなかったりして。」


さっき緊張すると言っていたから冗談でも言って和ませようかと思ったが慣れないことしたせいで更に追い詰める形になってしまった

両手を振って否定したけれど後ろからポーラが静かに僕の案に肯定的な言葉を紡いだ


「ポーラ……」


「訓練としてはこれが最後……どんな事にも臨機応変に、冷静に立ち振舞えるように。訓練と甘く見ていると痛い目に合うようにしてくるかも。」


「いや、だからってまさか、突進はねえだろ……」


さっきは笑って否定したタルも、ポーラの一言を聞いて表情が一変した

ジュエルに至っては


「あたし、一応泳げるけど、ここから鎧着て港までは自信ない……」


と、割りと本気で項垂れている

確かにポーラの言うことには一理あるしそういう心掛けをしておくのは良いと思う

けれどいつも元気なジュエルがあんなに落ち込んでいるのはなんだか可哀想なので早着替えをマスターしておけば大丈夫だよと言っておいた
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