軽薄短小

□きになるきになるすきになる
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ここまで長く、そして分かりにくく遡って話した訳ですが


やっと今に戻しますと







本日がそのバレンタイン当日となります












「今日早く終われ」



そして私の現在地




トイレで頭を抱えてます




地球最後の日か?




置いてきた教室のバッグには、午前中の内に配り終わった友達へのとは別の物が悲しくひとつ残っている



皆友達用の物は朝登校して顔合わせた時に軽く渡してたり

本命は昼休みや放課後なんかの、ちょっと時間がとれる時に渡すそうだ



しかし私は友達への流れで簡単にはいっ。て渡す事もできずに、かといって時間がある時にどこかに呼び出したりもしてない


でも他の勇気ある人は今まさに意中の相手に想いをぶつけているのだろうかと思っては、凄いなあとかいいなあなんて羨む言葉が出てくる


私なんて何なら今日リンク君とは一切喋ってない


口をきいたのは安心と信頼の友達だけだ


でもその友達もこの事を知っているからちょっとしたからかいや心配や好奇心で


まだ渡して無いでしょ。どうするの?


なんて言ってくる


その言葉に何か気まずくて顔を合わせ辛くて、授業中以外は教室外に逃げ込んでいる


今も絶賛逃げてる所だ






キーンコーンカーン……







昼休みの終わる鐘だ





教室に戻らなきゃいけない




「……はあ…」


今日何万回目のため息をついた

逃げる幸せがそろそろ世界一週して戻ってくる勢いだ


戻り際に、鏡を見ては無駄にいつもよりちょっぴり気合いを入れた顔と髪を整えて、またため息


あと二時間ほど猶予がある


その間に覚悟を決めなければ

二時間もあるんだ

きっと大丈夫


























「きりーつ、礼!」











「さようならー!」





























「はやい!!!」







そして短い!120分!

いつの間にこんなに時間経ってたの?私今日は寝てないのに、なんで?


もう人もほとんど居なくなった教室でバッグの中と腕の時計を一緒に見ては顔を青ざめた



まだ何も決まって無いよ

何が覚悟を決めるだよ

言う言葉すら決まって無いよ

なにもかもだよ


「……はあ〜……」


バッグの中に入ってる小さな袋に包まれたそれは、外の光が届きにくいせいか、一段と美味しくなさそうに見える


型崩れしないよう慎重に冷蔵庫に入れて

そのうえに一番形が良いのを選んだ物だったのに……

作っていた頃よりとても色褪せて見える


「なまえじゃあね〜!」

「あ、じゃあね……彼氏と…元気で……」


いつもより笑顔が深く手を振って教室を出る

淡いピンクのマフラーを巻いた彼氏持ちの友達に私も手を振った


このステータスの差…


軽やかに廊下に響く足音を聞いて、いよいよひとりになった静かな教室で小さいはずなのにやたらと重い袋を取り出した


やっぱり何か変かも


勝手に私が小一時間かけて決めたリンク君のパーソナルカラーとしたリボンを見て思った


いやただ登下校中に何回か見かけたリンク君の自転車がその色だったってだけだけど、これも本人が気付いたら気味悪がるよね


さっきの彼氏持ちの友達は可愛いから、あんな娘がこの演出をすれば、健気に彼の好きそうな色を考えた結果として見れるが……私は自分をよく知っている

のでそうはならない事が分かる


「…………もう帰ったよね………」


顔を上げて窓際の机を見た


リンク君の机


ここからでは見えないけど、中にはいくつか女の子からの想いが入っているのではないのだろうかと思った


けど見る勇気が無い


一緒に入れちゃおうかとも思ったけど、他の娘の隣にあれば色褪せた引き立て役だ


「…………帰ろうかな………」


小包を戻してバッグを肩にかけた

後ろ髪引かれるような感覚でもう一度窓際を見る



「…………」



顔を反らす





教室を出た
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