羊頭狗肉
□流されて
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数日過ごした無人島から陽が高いうちに出発して以降、一度陽が落ちて夜を超えた
それからはずっと天気が悪くて、朝なのか昼なのか、よく分からなくなってしまった
私たちの乗る小さな船をずっと霧が囲んでいる
出発するのにも、最初はリーリンと名乗った人魚からまっすぐ北に行けば一番近くの島に着くと教えてもらったが、今はどっちが北かも分からなくなってしまっている
如何せん今さっき現れたぽっと出のモンスターにオールを取られて無くしてしまったのがこの船の現状である
まさかこんなことになるとは誰も思ってなかったし
あまりの想定外の出来事ゆえに解決策も見つかっていない
「もうだめニャ……」
「そう言うなってチープー……ラズリルに帰るんだろ………」
チープーさんはお腹が空いたと言って足を投げ出すように座り込んでからはずいぶん静かにしていた
けれど他のみんなもあまりに見えない希望に口を開かなくなる
その静寂の中チープーさんがポツリと呟いた言葉にタルさんが前向きに相づちを打ったが、その声も元気がない
さすがにこれだけの時間、日陰も無い海のど真ん中で晒され続けて休みなくずっと波に揺られる船の上に居るというのは、想像以上に過酷だった
はっきりいって私は体力限界突破
船の上に居すぎて船が揺れてるのか錯覚を起こして私の視界だけがぐるぐる揺れてるのか分からなくなってきてなんだか気持ちが悪い
船の縁に手をついて更にその上に頬を乗せる
瞬きの目を閉じる時間が長くなる
波が揺れる上を霧が流れているのを、もう何時間も見ている気がする
このまま目を閉じて、眠って、次に起きたら私の部屋
なぁーんちゃって……
「船の音がする。近い」
縁に置いてた手を伸ばして海面に触れようとしたところで、ラズロさんがそう言って海を見た
みんながその言葉に立ち上がり空気を一変させてその音のする方を凝視した
「うっそ、見て見て!こっちに来るよ!」
「まじかよ!やったな!俺たちってばツイてるぜ!」
言われた通り耳をすますと確かに船が波を掻き分ける音が届き、霧の向こうからうっすらと船の影が見えた
タルさんがその船に向かって両手を挙げて大きく振った
私はこの前の商船の事を思い出して同じようにアピールするのを躊躇ってしまう
けれどみんなで一斉に立ち上がったせいで船が大きめに揺れる
そして眺めていると向こうから来てくれるおかげで
船の形が霧の中からよりはっきり見えてきた
船を捉える視界に一緒に見えた空の雲間から光が射し込んでいる