羊頭狗肉

□ライフライン
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陽は空高くに上がり、海に浮かぶ船をサンサンと照らしていた

失くなった帆の代わりに大きな緑の葉っぱが風を受けて船を揺らしている


「なんとかなるもんだねえ。
この先俺たち船大工になるってのはどうだい?」


「あははっ!それもいいかもね。
じゃ、あとは食料を船に積むだけだね。」


みんなで陸にあげてた船をなんとか海まで押して無事に浮かんでいる様子を喜んで達成感を口にしていると
ジュエルさんの言葉に反応してラズロさんが周りを見渡し始めた

その動作にどうしたんだろうと首を傾げると、目を合わせたラズロさんが小さく言った


「チープーが見当たらないんだ。」


その言葉に他のみんなもそういえばいつの間に、といった感じでチープーさんを呼んだ
けれど一向に返事はない

最後に見たのは、船の修理の仕上げあたりで、食料集めに行ったところだったろうか…
仕方ないからとりあえず荷物全部乗せちゃうかと決めたところで、ラズロさんが海を見ながら不思議そうな顔をした

つられて私も海を見ると、青い波から何か金色のものが浮き上がってきた

一瞬太陽の光が反射したのかと思ったが、どんどん海から出てくるその姿にみんなで目を大きくする

とはいえ一度は見た姿
その珍しい容姿を忘れることはなく、初めて見たときのことと重ねて海から出てくる人物をリンクさせていた

ラズロさんと初めて洞窟に行ったときに出会った、水辺に立っていた金色の髪が輝く人魚の女の子だ

その女の子は海から泳いで浅瀬に立つと私たちの前まで駆け寄ってきた


「リーリン」


タルさんとジュエルさんが「人魚!?」と驚いてる中で、ラズロさんが女の子を見てそう呼んだ

いつ名前を!?

リーリンと呼ばれた人魚の女の子はラズロさんと同じ青い眼を向けて初めて聞けた声でどんどん言葉を続けてくる


「ネコが『ヌシ』に追われてる。ネコじゃ勝てっこない。
きっともう、ネコかえってこれないよ。
ネコがヌシのこども殺そうとしたから、ヌシおこった。ヌシはすぐあばれる、だいきらい。」


「ね、ねこ……ぬし?」


猫はおそらくチープーさんのことだろう
ヌシというのには心当たりが無いけど、女の子の詰め寄るような休みを与えない勢いに流され、誰も何も言えなかった


「ヌシ上にいる。やっつけてほしい。
そうすればネコももどってくる。わたしも、きらいなのがいなくなる。
ね?」


するとそれだけ言ったリーリンさんは呆然として何も言えなかった私たちを置いて、ひとり海に戻っていった


「…………い、今の……え、『ね?』って……」


そして急な登場人物の姿も見えなくなり、数秒経ってからジュエルさんがやっと口を開いた

とはいえ、特にこのことに答えられる人物はこの場におらず
疑問は拭えないままタルさんが提案する


「ま、まあとにかくあれがホントなら
今頃、その『ヌシ』ってやつにチープー襲われてるってことだろ?上、行った方がいいんじゃないか?」


そしてその案に頷いて、上と言われた高台に向かうことにした
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