羊頭狗肉

□苦手科目は無言の暴露
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この世界に来てから、たくさんのことを知った
その中から特に私の世界とは違う部分をピックアップしよう

まずその1


銃刀法違反なんてない


物騒すぎるよね



その2


戦争は身近なもの


まじで怖いんですけど



その3


紋章とかいう魔法がある


ホウキで飛べたりとかはできるのかな



その4


流刑とかある


冗談じゃないよね



その5


モンスターがいる




その6


人魚もいる














「…えっ………今のって、人じゃないんですか?」


「足元見なかった?本物の鱗だった。噂は聞いたことあったけど、本当にいるんだね。」


見てられるような冷静さ兼ね備えてねえよ

と、思いつつ人魚が飛び込んだ揺れる水面に視線を戻して、またじっと見た












あれからずっとラズロさんが騎士団に居たときの話を少しずつ聞かせてもらいながら洞窟を歩いていたら、気付けば一番奥の行き止まりまで辿り着いていた


水の音がやたらするようになって、すこし湿っぽい空気に包まれる中
私とラズロさんが見たのは

キラキラ光る金色の長い髪を全部結い上げた大きな三つ編みの後ろ姿
それを揺らしてラズロさんとそっくりな青い瞳を向けたのは幼い顔した女の子だった

私たちの存在にびっくりした様子の女の子は
何も言わずに、何も言えない私たちから逃げるように目の前の水に飛び込んでしまった


えっ、とラズロさんと目を合わせてその水を覗き込んで見たけど、一向に女の子が上がってくる様子が無い


無人島だと思っていた場所に私たち以外の人が居たのかと驚きたかったが、女の子が上がってこないことに気を取られ、黙って見ているとラズロさんが私より早く水面から一歩引いて私に言った


「今の、多分人魚だよ。」


水面から上がってくる湯気を手で払いながら、遅れて私も一歩身を引いた


「ま、まあ……チープーさんみたいなのがいるくらいですしね……不思議じゃないのかな……。」


水だと思ってたけどこれお湯だと湯気が目に滲みて顔に纏わり付いた熱気で分かった

人魚って魚と並列して水しか受け付けないイメージあったけど、お湯も平気なんだなと、ラズロさんの空気に感化されて、水面の前にしゃがんだラズロさんを見ながら冷静にそう思った


「……これ、もしかして温泉かな。」


「どうなんですかね。熱くないですか?」


もはやさっきの人魚のことなんか忘れて、マイペースにラズロさんが指先をお湯に浸けるのを膝に手を置いて眺めた
ラズロさんの指から水が揺れて波紋が広がった


「そこまで熱くは無い。
……入れるかもね。」


「ええっ……底見えませんけど、怖くないです?」


ピッとお湯から離した指の水気を払って立ち上がったラズロさんの言葉を聞いて
ランタンをかざし水底を見ようとするが、光が届かないのかランタンの光は水底の暗さに飲まれていく


「でも海水でべたべたしない?タルたちにも後で教えてあげよう。きっと喜ぶよ。」


「そうですね。」


まあ海に流されても生きてたくらいだし、こんな波もない水怖がる方がおかしいか。と少し歪んだかもしれないと自覚しながら、行き止まりの洞窟を後にして元来た道を歩いて戻った


この洞窟には岩みたいな見た目をしたカニがたくさんいたのに帰り道気がついた
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