羊頭狗肉

□知る由
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とても騒がしかった


朝ラズロさんが部屋を出て

次に部屋に戻ってきたのは人に運ばれてだった

私は悪いと思いながら部屋の外が騒がしくなったとこでこの部屋にひとつだけあるやたら大きい箱に隠れ入った


私がここに来た時はこの箱に収まるように落ちてきたらしいから出戻りかななんて考えながら声を聞いていた


ガチャガチャという鉄のぶつかる音がやたらと響いてきっとラズロさんの服と同じような人たちがいるんだろうと想像した

容態を心配するような言葉とラズロさんのはっきりしない声色に何かあったんだと予想つく

ここは騎士団だと聞いたしこういうことが本当にあるんだと他人事なのに心臓がどきどきした


チラッとだけど海賊がどうとか……団長も倒れたとか……


団長というのが誰なのかとか詳しいことは分からないけど
体調が優れないのは代わり無いんだろう




しばらくして、ある程度ラズロさんの声が安定して聞こえるようになると部屋に送り届けにきた人たちが心配する声を残しつつ、仕事に戻ると部屋を出ていった



パタンと扉が閉まる音がしたのを確認して
そっと箱のフタを中から上げて目だけ覗かせる

おもちゃにでもなった気分だ


「………あっ…………名無しちゃん!?」


扉の閉まった音を最後にシンとしたはずの空間に急にラズロさんが声をあげた


誰の声だとかを認識する前に驚いて箱を閉じた

部屋の灯りがわずかに入ってきていたのを打ち切ってまた暗闇に自分を閉じ込めてからハッとしてまたそっと箱を開けた


「……え…そこに入ってるの?」


その声にさっきよりも大きく開けて顔を出す
部屋にはベッドにラズロさんがいるだけで他には誰も居なかった


「す、すみません……人が来そうだと思って、咄嗟に………。」


大丈夫そうかなとフタを全部開けて一緒に抱えて入ったカバンを先に出して片足ずつ転ばないように箱から出た


「いや、いいよ。少しびっくりしたけど。」


「あの、大丈夫ですか?」


服を整えながらフタを閉めて一丁前に心配の言葉をかけてみる


「ああ、うん。僕は平気……でも団長が……。」


上半身だけ起こしたラズロさんが私の言葉に頷くと片手で頭を支えながら何か呟く

さっきまで部屋に居た人たちも言っていた『団長』と


「……団長?」


「あ……うん……。
………………海賊と戦ったんだ。」


私が聞くようなことでも無いとは分かりつつ首を傾げると
ちょっと黙ったラズロさんは何か考えるように青い眼をじっと一点で止める

そして瞬きを一度するととんでもないことを言った


か、かいぞくとたたかった??????


「………そ、そうなんですか………。」


「………初めて見る紋章だった………。」


「………そう、なんですか………。」


私から聞くような口を利いといて、何を言ってるか分からないからって黙りこくるのもと思って相槌を打ってみるが中身は置いてきた


でも私の生半可な返事なんて聞こえてないようにまた一点を見つめて


「うん……」


なんて頷いている

とりあえず目に見えるような外傷は無さそうだし人知れず安心した

私なんかが心配したってしょうがないけどここに来てからの大恩人の無事を確認できて良かったと思う


「団長の様子を見てくる。」


と、それを最後に部屋を出ていった


別に私に言うことは無いんじゃないかと思いつつ外に出るラズロさんの後ろ姿を目に記憶した
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