羊頭狗肉

□おはようございますのごっつんこ
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目覚まし時計のうるさい音は今日は無い

すばらしい寝起きだ

よく寝た。

いつもの気だるさがない朝って気持ちいいな







目覚ましが鳴らない朝


「……」


それ、寝坊じゃ


「はっ!!」


まさにガバリと起き上がって時計の置いてある場所に目を向ける


「……………無いし。」


慌てて見開いた目を向けた位置に何も無い

あれ?なんて呆けた顔して瞬きする

視界の先にはコンクリートみたいな壁
私の部屋ってこんなに味気無かったっけ


……そんなはずない


起き上がったことで落ちた薄めの布団の存在に気付いて何となく不安なので自分を隠すかのように持ち上げてみた

一風変わった夢だなー、と思いながらコンクリートみたいな壁の部屋をぐるりと一周見渡す

扉がひとつあって何か大きい箱みたいなのがあって棚があって……

何もない部屋だな


いや、これ夢?あまりにリアルな感覚に目を擦る

もし夢じゃないならあれだ、

階段にしゃがみ込んで両手で頭叩きながら覚めろ覚めろ覚めろ!ってやらなきゃいけないね

喋るカエルに会えるかな


なんてね


夢とは分かりつつちょっとリアルすぎる情景にベッドからおそるおそる降りて部屋をもう一度確認する

部屋の隅に見馴れたカバン

私のだ

何かあるんじゃないかとそーっと鞄のチャックを開けてみる

良かった。何も無い。いつもの私のカバンだ
もう手に馴染んでる鞄を持ってどことなく安心する
いつもはこんなに意識することなかったから気にして持つと「これ、私のかな?」なんて冗談めいた疑問

さっき中身見たときに私のだって確信したのに


「……」


いや、カバンがどうとかってレベルじゃない
問題なのは今私が置かれている状況
ここに至るまでの事を思い出そう


朝は確かちゃんと起きて、学校にも行った。授業も眠くなる六時間目以外はまともに受けた記憶がある

それから家に帰ろうと、学校を出た

そもそも外靴を履いてる時点で学校は出たんだ。大丈夫。

それから電車に乗って……うん乗った。


それから……それからえっと…………


「……いや、分かんないや……。」



これもしもだけど、仮に夢じゃ無いとしてね


誘拐とかってなるんだろうか


いやまあ、夢じゃなかったらね。夢だけど。


とりあえず今夢じゃなかったらとして重要なのは連絡を取れるかの確認だ

怖いし



ポケットに入ってるスマホを取り出して画面を見る


「………………うわ。」


割れていた

携帯の端から端までひび割れしている


「嘘じゃん……。」


しかも電源が付かない
どんなに電源スイッチ押そうが画面に触れようが呼び掛けようが(意味は無い)全く付かない


これが夢じゃないなら色々終わったんだが


「………。」


仕方ないので開くか分からないけど扉を開けてみよう
とにかく行動

音がしないようそっとノブを捻って頭だけを覗かせて外を見る


別段誰も居ない


なんとなく物音をさせないように部屋から出て様子を見る
扉がひとつふたつとあって上に続く階段もある

部屋に窓が無かったから地下だと思ったので他の扉を無視して階段を上りたい


まあとはいえ今のこの部屋に訳も分からず居続ける意味は無いし
ここがどこかをとにかく早く知りたいと階段に行くことを決心する


かかとから爪先にゆっくりめに地面につけて歩く


抜き足差し足


それにしてもここは不思議な空間だ


周りの壁は一面粗いコンクリートみたいだし

扉は飾りかのようなそのまんま木だし

電気じゃなくてろうそくだし

なんだろう、一言でいうと古めかしい感じ
ある意味ファンシーともいえなくも無いかも

コンクリートに囲まれろうそくの火が揺れる音だけが耳に届き、何とも言えない不気味さに包まれながら階段を一歩一歩丁寧に上がる
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