死中求活

□ほんとのほんとは
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「なぁ、オマエさ、ちょっとは自分の状況とか気にならねーの?」

「え?」

念願の剣と盾を手に入れて、村にはもう用はないと出ていくと
ミドナさんには多少文句がきたが、取ってきたことには変わりないと最後に言われてニヤニヤしていたところでそう聞かれた

上がってしまう頬を両手で押さえて、すぐ側に居る狼先パイの背に乗っているミドナさんを見た

ミドナさんはニヤニヤしていた私を怪しむでもなく、からかうようでもなく、ただ不思議そうに見ていた

「状況……って、いまの?私の?」

「だから聞いてるだろ。ワタシも割りと興味が出てきてな」

予想するに状況というのは私の全てのことだろう
例えば、これまで、狼先パイは喋れないから例外として、ミドナさんとはそういったことはまるで話していない。
いや、まぁ最初は多少なりとも聞いていたが全部スルーされてしまっていた

ミドナさんもそれをさすがに自覚しているからこそ聞いてきたんだろうけど

「気にはなりますけど……でも、私の状況なんて、私が分からないなら、他の誰だって分からないと思うんで、触れないようにしてるだけです。」

リンクさんの家を横切ったところで答えるとミドナさんは、背中から下りて私の顔の位置までフワリと浮くと

「そうだな、じゃあ、オマエは確かにそう考えているんだろう。」

宙に浮きながら腕を組み、いつもの笑みを私に向けた
ミドナさんが顔の前に来たため立ち止まると狼先パイもそれを見て歩みを止めた

「疑問は山程あるんだろう。そりゃあな。でも、オマエは何に疑問を持っていいのかすら、分かってない。」

「疑問が?」

「この世界は光の領域と影の領域とに別れてる。それはさすがに分かるな?」

いつもの笑みも消して確認をした
私は一応分かっているつもりではあるのですぐに頷く

「じゃあ、光の領域の人間が影の領域に入ると、魂だけになったのも、分かるな?」

「はい。あの、青色のやつですよね。」

「それなら、どうしてオマエはそうならない?」

ぴくっと無自覚に体が跳ねた
ミドナさんは更に続ける

「トライフォースという、神に選ばれた者だけが持つ力。
つまり神の力を持っているとすれば話は変わるが、オマエがそんな大層な物を持っているはずはない。」

「は、はい……。」

「となると、だ。オマエはこの世界にとって何になるんだ?」

「……?」

ミドナさんの言うことが意味が分からなく、何になるんだ?とおうむ返しをしながら額に少し力が入る

「だから、ワタシはこの世界にとっては影の領域の住人。影の者って括りになるわけだ。
そして、コイツは今は影の領域の力によって姿は変わっているが、トライフォースって力で魂にならずにすんでいる光の領域の住人だ。
その中でオマエはどこの住人で、誰なんだ?」

「あー……。」

ミドナさんは私の目から一切反らさずに話を続けた
そしてその疑問は、まだミドナさんは答えが出ていない様子
そこで私は狼先パイからも見られミドナさんにも見られ居心地悪くなり、目を反らした

そこで思い出した。

でも、かといって今まで嘘ばっかり伝えてたトアル村の人達は居ないし、一番知られたくないリンクさんも居ない
そもそも光の領域では私とたいして変わらない立場のミドナさんになら別に知られてもいいかと思い、もう一度目を合わした

目が合うとミドナさんは
「おっ」
と言ったような表情をし、私がこれから話すことの意外性を予想しているようだった

そりゃ、過程とかを突き詰めたら分からないことの方が多いけど
影の者とか光の領域とか、そんなことが関係ないのは、

「私、別の世界から来たんです。」


もうとっくにわかってる
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