軽薄短小

□寝る
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なまえは寝るのが早い









そりゃ俺も寝付きは良い方だとは思う

実際に寝付きが悪い人っていうのを見たこと無いからよくは知らないけど
前になまえが

「私寝付き悪かったんですよー。
一日そんな疲れて寝るほど動く訳じゃないし、授業中は眠くなるんですけど、いざ寝ようとすると携帯いじっちゃったりして全然寝られなくてー」

けいたいの説明は前に聞いたけど、よく分からなかった
でもとにかく寝付きが悪いというのは聞いていた
しかしこっちに来てからというもの寝ようとすると一瞬で寝られるようになったとか

それなら良かったと思った

でもなまえの寝付きは驚くほどのもので、ちょっとやそっとじゃ起きない

本当に起きない


前に化け物が結構近くまで寄ってきた時
近くにいる他のやつらへの威嚇としても戦ったことがあったけど、その時も起きなかった

俺が言うのもなんだけど
ひとつの命がすぐ横で失くなる断末魔さえ届かないのは凄いと思った
そして同時に、そんなに疲れるほど毎日動き回らせることに罪悪感を感じてたのはなまえには内緒

多分また謝るだろうし

「………………」

今日もベッドに入って一瞬で寝たなまえの後ろ姿を見て
俺の罪悪感に、いつもの多弁に喋りながら謝るのを想像して笑みがこぼれた

そしてふと、ベッドに流れてるなまえの髪に、いつもは俺の後ろに居るからそう見ることができないものだなと思うと
自然と手を髪に伸ばした

サラ、と手に取った束が落ちていく

この時起きてたらいつもみたいに

「ちょ!っと!なんです!?ゴミがついてました?あっ、私がゴミです?めっちゃ分かる
ごめんなさい、友達なんで髪にくっつけちゃってました。」

なんてまた、何も言ってないのにひとりで喋っては俺から何歩も離れるんだろう

「…………ヤギと寝るとか……………ペーターじゃん……。」

「え?」

「…………。」

寝言か

ていうかヤギと寝るって、前に俺がやったことだよな

ペーターってなんだ?
人?
その人もヤギと寝たのかな

なまえがやけにハッキリ言った寝言について考えていると

「……ん……。」

ゴロリと俺に向けてた背中を回して、ベッドに突っ伏すように寝返りをうった
元々俺から結構間を空けて寝ていたせいで、寝返りひとつうてば落ちかけてしまう

「なまえ、落ちちゃうよ。」

やっぱりちょっと高くても二つの部屋にした方が良かったかな
でもお金無いしな

そう思いながら肩を掴んで元の向きに直させる

力が強かったか元より仰向けにまで引っ張ってしまった
見えやすくなった顔を覗いてみたが、起きる様子はなさそうだ
良かった

仰向けにしたせいで乱れてた髪をそっと整える
寝てるとはいえ、俺のせいかと思うとちょっと悪い気がした

なまえはいつも絶対に俺に寝顔を見せない
毎回必ず俺の居る位置から反対に向いて鞄を抱いて寝る

これも新鮮だなと布団を直しつつ見ていると、また向こう側に寝返りをうとうとする

「だから、落ちるよ。」

なまえは寝ていても俺に向かないようにするんだろうか

片手を伸ばして抱き戻す
もうこのまんまでいいかと息をひとつ深く吐いて、目を閉じた





次に目を開けたときは

また明日が来るんだろう



















「……来なくても、いいかな」
























やっぱりだめかな
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