軽薄短小

□寝る
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「お部屋はベッドがお一つのものと、もう空き部屋が少ないので料金は上がってしまいますが、お二つの部屋がございます。どうなさいますか?」

「えっと……ベッドって…サイズは?」

「はい。大きいサイズですので、お二人でお使いすることもできます。」

「じゃ、ひとつでいいか。」

「え!?」





ハイラル城下町



次の目的地の為に情報収集をしようと来たのが今日の話

町に着いたのは昼過ぎ頃
そして色々な話を聞いて何とか次行くところの目星がついたのはついさっき日も落ち始めたほどだった

明日出発にして今日はもう宿で休もうなんて言って、久しぶりのフカフカベッドと死ぬほど喜んだのもついさっき

でも予約をとってた訳じゃないし、もう時間も結構遅めのせいで
安くて手頃な宿はほとんど埋まっていた
多少苦労したが、ちょっといいところのを見れば、やっと部屋が空いていたのを見つけた

それじゃあここにしようと決めた時のこと。

それが冒頭だ


「え………って嫌だった?」

私の反応に、リンクさんが振り向いてキョトンとした顔で傾げた

基本的に私は着いていくだけなのでリンクさんの後ろの方に居るだけで、特に口出しもしないし、見てる聞いてるだけだったのだが

今回はさすがに口に出た

「……え……あー、その……嫌とかでは……無い……というか……」

リンクさんのあまりの純粋行動に当てられて
上手く言い出せずにいると

「サイズ大きいから二人でも寝られるって。
大丈夫だよ。俺もなまえもそんな寝相悪く無いから。」

そうじゃねーよ。
なんてまた口に出そうなのを飲み込んだ

だってこれはリンクさんの名義で部屋を借りる訳で
それはつまりリンクさんがお金を出すということで

お金の話というのはナイーブだ
特に文無しで全てリンクさん頼りでいる私にすればとてもわがままを言える立場では無い

しかもお金を出す当の本人は料金の安い方で良いと言っているのだ
それを曲げるなんてことはそりゃできない

だが頼む、察してくれよ今回は。
言ってくれよ受付さん。
安くしてよ今日だけは。

「……あ、はい……そうですね……。
大丈夫です……。」

「うん。」

なんてそんなこと言えないし
バーンズさんから爆弾買った時なんか

「お金ほとんどはたいちゃった。貯めなきゃね。」

「なぜか知らんけど魔物達がお金落としますしね。次の神殿で金目のも……宝箱たくさん探しましょう!」

なんて会話したのを覚えてる

そりゃ昨日の事だしな!


こうなれば仕方ない
前向きに考えよう
いやこれは逆に好機と取るんだ
絶世のイケメンとひとつ屋根の下同じベッドで寝られるんだ
うん。
死ぬ。


「ではこの鍵に書いてある番号のお部屋です。ごゆっくりどうぞ。」

「どうも。
行こう。なまえ」

受付を済ませたリンクさんが部屋へと先導する
私もいつものように後ろに着いてく

まあこれだけ言ってても後は寝るだけだし

「久しぶりに部屋で寝るね。なまえは野宿より好きだよね。」

「ま、まあ……固い土よりは、はるかに。
でも体験したこと無かったし、することも無かっただろうし、新鮮で嫌いではないですよ。」

まあ、嘘。
嫌いだよ
土は固いし
虫は嫌だし
魔物は怖いし
何より布団に包まれる安心感が足らなすぎる

こんなの一日中動き回って疲れてなきゃ一生寝れない

「俺も好きだな。
土とか草の匂いって安心するから。
トアル村に居た頃なんかヤギと牧場で寝たりしたよ。」

と、私に笑顔で言った








私も野宿大好きです。
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