FAIRY TAIL

□*014*
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私たちは依頼者を訪ねたあと、街を歩いていた


『なかなか見つからないねー』

「そりゃあな。簡単に見つからねぇだろ」


そのまま街を出てしばらく歩いていくと、ある二人組の話が耳に入った


「あれって、いま噂の闇ギルドだよな?」

「ああ。なんにせよ、人をボコボコにしてたからな」

「怖ぇな」


私とラクサスは顔を見合わせ、急いで駆けつけた



そこには、倒れている男女がいた

男の人は女の人を庇うように倒れていた


それは、グレイとジュビアだった




『っ、グレイ!ジュビア!』

「おい、お前ら。大丈夫か」


ラクサスに彼らを任せ、私は闇ギルドの人たちと向かい合った



「おいおい嬢ちゃん。そんなとこにいたら危ねぇぞ?」

「ま、逃げるまもなく俺たちが捕まえちゃうけどな」


そんな言葉は、私の耳には届かなかった


『テメェらは、妖精の尻尾を…私を怒らせた
そのことを後悔するがいい!!』

「後悔ぃ?」

「はははははっ!笑わせてくれるじゃねぇか」

「そんなクズの仲間なんて、大したことねぇよ」


“そんなクズ”

その言葉だけ、私の耳に入って来た


『そんなクズ?
テメェらみてぇに動けねぇ奴を攻撃してる奴らがクズって言うんだよ

仲間の痛み…その汚ぇ命で償え

…………………死んで詫びろ』




ラクサスはアサコがおかしいことに気がついた

現に、デリオナに変身していくところだったのだ


「っ、アサコ!」

ラクサスは呼びかけるも、アサコからはなんの変化も感じない


「ひ、ひいぃっ!バ、バケモノ!!」

「ち、近寄るんじゃねぇ!」


さっきの威勢は何処へやら、怯えきっている闇ギルドのメンバー


「っレイジングボルト!」

ラクサスは、歯止めの意味も兼ねてアサコに攻撃をした


アサコに変化が感じられた

元の姿に戻っているのだ


『ラクサス…ありがと』

ラクサスのほうを振り返り微笑むアサコは、とても苦しそうで、瞳の奥に深い影を宿していた

その表情に、ラクサスは胸が引き裂かれるかのような痛みをおぼえた


『だが、お前たちを許したわけじゃない
東の魔法、倭建命(ヤマトタケルノミコト)』


アサコはすばやい動作で、闇ギルドを倒した


『東の魔法、月読』

私はひたすら治癒魔法を施した


「アサコ、もういい」

『わかった。ラクサスっ、急ごう』

「ああ」


私たちは急いでおばあちゃんのところに連れていった




─────────




「診察は終わったよ。あんたが治癒魔法をきちんとしたおかげで、大事に至らなくて済んだようだよ」

『よかった……』

私は張り詰めていた何かが切れて、へにゃりと床に座り込んだ


「ん……グレイ…さま?」

『っ!ジュビア!!』

「ジュビアはいったい……
はっ、グレイさまは!?」

「ん……」


ジュビアが目を覚ましたあと、グレイも目を覚ました


「ここは……?
っ!ジュビアは!?」

「ここにいます、グレイさま」

「お前、大丈夫か!?」

「はい、グレイさまのおかげで……
お怪我をさせてしまってすみません」

「いや、お前が大丈夫ならいいんだ」


よかった……と呟きジュビアを抱きしめるグレイ


『ジュビア、グレイ、大丈…』
「なんでお前がここにいんだ」

私の声を、冷えきった彼の声が遮った


『グレイ……?』

「なんでお前がここにいるんだって聞いてんだ!
またジュビアに嫌がらせをしに来たのか!?」


“また”“ジュビアに嫌がらせをしに来た”

その二言が、私の頭の中に響いた


『…………』

私は無断で立ち去ろうとした


「おい、グレイ。お前何言って…」
『ラクサス。依頼者に報告しに行ってないから早く行くよ』

私は無理やりラクサスを引っ張っていった


その時、ポーリュシカは悲しそうな目でアサコを見ていた



───────



「アサコ、あれはどういうことだ?」

『どうもこうも、元々仲が悪くて表面上だけでも仲いい風にしてたけどそれが終わっただけ』


それはない。とラクサスは思った

もしそうなら二人ともすごい演技力だ
しかもグレイは確実にアサコが好きだった

それは、火を見るより明らかだった


「俺には嘘をつかなくていい
どういうことだ」

『………多分闇ギルドの奴らが術をかけたんだと思う』


そう。記憶喪失だとムチャのある記憶違い

だとすれば答えは一つ


あの闇ギルドが……いや、冥府の門が仕掛けてきたのだろう


『このこと、誰にも言わないでね』


私たちは、そのままギルドに帰った




──────





『みんなただいまー!』

アサコはさっきの様子が嘘のようにいつもどおりだった


いや、ラクサスからすればいつも以上に明るく振舞っていた


『ねぇねぇナツ!私、ナツが好きそうなメニュー考えたの!』

そう言ってアサコは、炎を纏ったステーキを出した


「うおっ!すげぇな!!
モグモグ…………ん!うめぇ!!」


ラクサスは、そんな彼女を2階から見つめていた


「ラクサス〜。どうだったんだ?アサコとの久々の仕事は」
「どーだったんだー?」「どーだったんだー?」

「あ?普通だよ」

「ど〜見ても普通じゃないでしょ、あの子
どうしたの?」

「ハァ……やっぱ、この時点でバレる奴にはバレるよな………」

「ラクサス、何があったんだ?」


「グレイが記憶喪失だ。アイツを完璧に敵視してやがる」

「そんな!」

「記憶操作か?」

「そうだろーな」
「だろーな」「だろーな」


アイツはグレイのことを恋愛対象として好きな分、辛ぇだろうな

とラクサスは思った



「で、どの部分でみんなが異変に気づくと思ったの?」

「グレイとジュビアが帰ってきてからだな」

「……想像できちまったゼ」

「アサコは、精神面ではやはり打撃がデカそうだな」

「ああ」


何気なくマカロフに目をやると、そこには依頼受理の解消をしているギルダーツがいた

彼は視線に気付き、こちらに近づいてきた


「なぁ。いってぇ何があったんだ?」

ラクサスは先ほどの話をギルダーツにも聞かせた


「そうか……。アイツが変な気を起こさなきゃいいけどな」








──アサコの最愛の人が、自分の記憶を失ってしまった


それは、思いもよらぬ運命を築き始めていた



To be continue……

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