君の幸せを願ってる

□Y
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オビは朝子が王子直属見習いに任命された翌朝、彼女のあてがわれた部屋にようすを見に行った


「朝子…さん?」

『っあ、オビ。おは…ようっ』


彼女はなんと、朝早くから筋トレをしていた


「……何してんだい?」

『え?筋トレ?』

「なんで?」

『ほら、私の取り柄って絵を描くことと武術しかないから、せめて筋肉をつけてオビみたいにぴょんぴょん跳べるようにならないかな…と』

「なんでそんなこと…」


オビの問いを朝子は遮った


『あ、朝ご飯食べた?』

「いや、まだだけど……」

『一緒に食べていく?私も今からだし』

「え?」

『……あ、そうだよね
釈放されてオビの後輩になったとはいえ、得体の知れない私が作った料理なんて食べれないよね』

そこまで考えれなくてごめんね?と言いながら苦笑いする彼女はどこか悲しそうで、自虐的なところが放っておけないとオビは感じた


「いや、食べてくよ
朝子の作った料理、食べてみたいしね」

『!……うん!腕によりをかけて作るね!』


オビが食べると言った瞬間、先程までの表情は嘘のような笑顔になった

そして料理が出来上がり、二人で食べ始めた


「おお、フレンチトースト!
あ、そういえばさぁ。朝子ってトリップしてきたって言ってたよね?」

『うん』

「あっちの世界ってどんな感じだったの?」

『……ここみたいに綺麗じゃない、汚い世界だよ』


…まただ
また彼女の顔が曇った

彼女は元いた世界の話をするときは必ずと言っていいほど表情が暗くなる


「(いつか話してくれるまで待つか……)
あ、そうそう。主が呼んでたんだった」

『ええっ!ゼン…じゃなかった、ゼン殿下が!?』


それは急がなきゃと慌てて支度をする朝子


『じゅ、準備オッケーです』

「よし、それじゃ行こうか」


朝子とオビはゼンの執務室へと急いだ


ガチャ


「ある…」
「遅いっ!」

ギンッとオビを睨むゼン


『あ、あの…ゼン?
私が引き留めちゃっただけだから、あんまりオビを怒らないで?』

朝子は眉を下げて言った


「そうか……。朝子、特に何もないか?」

『はい、大丈夫です』

「ならいいんだ」

『用件…と言うのは?』


朝子に問われ、ゼンは少し顔をしかめた


「兄上があと1時間後に会いに来いと仰っていた」

『私一人でですか?』

「………ああ。だが、俺が付いていっても…」

『いえ、一人で大丈夫です』

「あの兄上だぞ?」

『本当は優しい人だって知ってるんで』


そう言ってニコリと微笑む朝子


「そうか……何はともあれ、気をつけろよ」

『はい』

「あ、そう言えば朝子さぁ」

『ん?』

「俺たちのこと本で知ってるって言ってたよね?」

『うん』

「てことは、未来とかわかるの?」

「はああ!?」


オビの言葉にゼンが叫んだ


『……多分、無理じゃないかな』

「あら。そりゃまたどうしてだい?」

『うーん、うまく言えないけど……
多分これは夢小説でいう原作沿いじゃなくてオリジナルみたいなものだからかなぁ』

「余計わからん……」

『あ、ごめん
取り敢えず、登場人物とかは一緒だけどストーリーは別物って感じかな』


うーん…と唸っていたゼンだったが、未来はわからないということだけ理解してあとは諦めたようだ

そこから小一時間ほどお喋りを楽しみ、朝子はイザナの元へと向かった



コンコン


「入れ」

『失礼します』


カチャリとドアを開けると、窓の方を向いて立っているイザナがいた


『御用とは何でしょうか』

「……お前、あいつの…弟の部下になったそうだな」

『はい。私は反対したのですが……』

「…ほう?」


そこでイザナはようやく振り向いた


「反対した……とは何故だ?王家の部下…側近ほどにもなると名誉だろう」

『いえ…こんな何処から来たのかも分からない娘を側に置くとゼン様、ましてやイザナ様にまで迷惑をおかけしかねませんので』

「君は面白い娘だな」

『そうですか?
あっ、そういえばお願いを1つよろしいでしょうか?』


そう問うと、イザナは少し面白そうな顔をした


「いいだろう。ものによっては聞き届けよう」

『はい。実は……』


朝子が話し終えると、イザナは愉快そうに笑った


「はははははっ!それは面白い
いいだろう。その時は君に伝えよう」

『ありがとうございます』




さて、彼女は何を頼んだのか


これからその選択が、彼女の道をどう左右するのか



それはまた、次のお話で……




To be continue……

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