君の幸せを願ってる

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朝子は今、ゼンたちに絵をべた褒めされている


『あ、ありがとう……
と、ところで!牢に戻らなくてもいいの?』

「……お前、やたらと牢に入ろうとするな
そんなに牢が好きなのか?」


朝子は少し考えた後、こう答えた

『好き…というか、この世界に居られることが幸せで……
ゼンたちは、私が牢からたくさん出てたら伯爵とか貴族の人たちからいろいろ言われるんだろうな〜って思うとそれも嫌だから……かな?』

「……主。やっぱ朝子は悪い人じゃなさそうですよ」

「そうだな……
よし!お前、今日から釈放だ」


ゼンの言葉に朝子は驚愕の表情を見せた


『え、今の話聞いてた!?
こんな事したらゼンが何言われるか…』

「お前が気にすることじゃない」


ゼンは朝子の言葉を遮り、頭を優しく撫でた


「お前はもう自由だぞ」

『あ、はい。……お世話になりました』


朝子は戸惑いながらも城を後にした


「んじゃ、戻りますか主
(これで朝子と会うのも終わりか……
なかなか楽しかったんだけどなー)」





──────────





「今日は少し森を通ることになる
獣には気をつけろよ」

「りょーかいしました」

「ああ」

「わかってる」


ある日、ゼンたち一行はある砦に行くために森を通っていた


そして、その砦からの帰り道


「!␣主、下がっててください」

オビが何かの気配を感じてゼンを後ろに回した

ミツヒデと木々も身構える


「ぐるるるる…」

林の間から3頭ほどのオオカミが出てきた


「縄張りに踏み込んだか…?」

「いや、行きもここを通ったんで違うでしょう」

「縄張りの近くなんじゃないか?」

「どちらにしろ厄介だね」


四人は罪の無いオオカミたちを傷付ける気は毛頭ない


すると

ガサガサっと奥から大きなものが出てきた


「ボスか?」

「ますます厄介ですねぇ」


『どうしたの?まさか、敵!?
下がってて、みんな!』


そこには先日釈放された朝子がいた


「は?朝子!?」

「どうしてお前がここに……」

『え、ゼンたちだったんだ……
警戒しなくていいよ。この人たちは敵じゃないから』


彼女の言葉にオオカミたちは大人しく下がった


『どうしてここに……って、こっちのセリフだよ』

ここはオオカミたちの縄張りがあって危ないのに……と呟く彼女


「危ないのはアンタも一緒なんじゃないの?」

オビの言葉に、朝子は意味がわからないという顔をした


『大丈夫だよ?
この子たちはお友達っていうか、家族だもん!』

ねー
とオオカミたちに話しかけて優しく撫でる朝子



「…………………は!?」

「てことは、今の今までコイツらと森で暮らしてたのか!?」

「森で生活!?」

「頼もしいね」


驚愕の表情を隠せない四人


『え?だって、こっちが心を開けば簡単だよ?』

「え、飯は!?」

『植物と動物』

「服は?」

『二着を交互に』

「住まいは!?」

『……洞窟とか?』


オビと木々とミツヒデの問いに淡々と答える朝子



「お前、家は?」

『へ?だから洞窟……』

「じゃなくて!実家は?」

『えーと……日本の兵庫県』

「だから、日本という国は『ないよねー』…は?」


朝子は観念したように笑った


『私、異世界からトリップしてきたみたいだから』

「ようするに、異世界の人間だと?」

『うーん……まあそう言う事だね
…人間かどうかはわかんないけど』


最後の呟きは誰にも拾われずに宙に溶けたと思われた

だが、オビはしっかりとその耳に入れていた




「なら、城に来るか?」

『………………はい!?』

「オビだって元は敵だったが、今では俺の側近だ。なら朝子もそうすればいい」

『いやいやいや滅相もない!』

「肩書きは何がいいか……」


真面目に考え出すゼン


「よし!
俺の直属見習いだ!」

『……てことは、オビの後輩?』

「宜しくお願いしますね?朝子さん」

『……よしっ!
わかりました。よろしくおねがいします、ゼン殿下』

朝子は何かを決意したように顔を上げた


「ゼン殿下なんてよせ
さっきのようにゼンでいい」

『うん!
ありがとう、ゼン!』



朝子は
また遊びに来るねとオオカミたちに別れを告げ、この世界での新たな一歩を踏み出した




To be continue……

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