君の幸せを願ってる

□W
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朝──


「朝子さん」

『はーい?』


朝子が呼ばれて振り向くと、リュウがいた


『え、リュウ!?なぜこんなところに!?』

「おれ、山に薬草のこととかいろいろしに行こうと思ってるんだけど一緒に行かない?」

『い、行く行く!……って、私一応投獄中の身なので無理です
ごめんなさい………』


あー!悔しい!!
本当ならかわいいかわいいリュウと山に行くはずなのに!

なんて思っていると


「あ、大丈夫
おれ、ちゃんと王子に許可とったから」

『へ?』

「行こう」


いつの間にかリュウが入ってきていて、腕を引かれて行った







そして森──


『あ、リュウ!これってココ草じゃない!?』

「本当だ。朝子さん、良く知ってるね」

『だって私の特技は話に出てきた薬草を覚えてることとクラリネス文字が書けることとみんなの絵が描けることだから……って、取り柄がしょうもなさすぎるよね』

「ううん。すごいと思う」

『そう言ってもられると嬉しいな
ありがとう』


朝子が微笑んでみせると、リュウの頬がほんのり紅潮した



漸く採集などを続けていると、唸り声が聞こえた


「この声…オオカミ?」

『下がってて、リュウ』

朝子は歯をむきだしにして威嚇している狼にゆっくりと近づいて行った


『大丈夫、怖くない
私たちは敵じゃないよ』

朝子とオオカミの距離が大分近くなった頃、オオカミは彼女の右の二の腕に噛み付いた


『っ……大丈夫。怖くない、怖くない』

そこからはポタポタと血が流れ出しているが、彼女は気にせずオオカミを抱きしめる



漸くすると、オオカミは朝子の腕を離して自分が付けた傷をペロペロと舐め始めた


「クゥーン……」

『これくらい大丈夫だよ』

「バウバウッ!」

『本当!?ありがとー!』



それを木の上から見ていたオビは

「わぉ。朝子、オオカミと会話してるよ」

彼女に驚いていた



「朝子さん!大丈夫!?」

『あ、リュウ!うん、大丈夫だよー
よし、再開しようか!』


朝子はオオカミと別れを告げたあと、リュウに再開しようと持ちかけた


「ダメだよ、傷になっちゃう
今日はもう帰ろう。おれが手当てするから」

『いいの?』

「うん」


リュウは彼女の怪我をしていない左腕を引いて帰って行った




「ふーん
彼女は敵じゃないかもね……」


オビはそう呟くと、木を伝ってゼンの元へ急いだ





─────────





『イテテテテッ!』

「あ、ごめん」


リュウが朝子の怪我の消毒をしているが、どうも大変素晴らしい染み具合のようだ


「朝子さん……」

『〜っ……ん?』

「無理はしないで」

『はーい。以後気をつけマース』

「お前、本当に気をつける気があるのか?」


朝子が振り向くと、木々とミツヒデを従えたゼンがいた



『え、ゼン!?何故にここに!?
あ、わかった!
執務が嫌で名前の欄に“白雪”って書いたり、うたた寝をして寝言で“白雪”って言ったりしないように白雪に会いにきたんだ!!』


うん、絶対そうだ!とばかりにマシンガントークをする朝子


「あのなぁ……
お前の様子を見に来たんだよ」

『あ、さっきの件ですが……本当に気をつけるよ?
かわいいかわいいリュウのたのみだもん!!』

当たり前じゃないか!と胸を張る朝子


「リュウ、お前コイツに結構好かれてるんだな」

『好かれてるどころか大好きです!
もはや愛してます!リュウとオビが一番うまく描けるんだよ!!』

「描けるって、絵画か?」

『え?うん。この世界の人は一通り描けるよ?』

何言ってんの?とばかりにゼンを見上げる


彼女が上手く描けるのも、赤髪の白雪姫が好き過ぎて当たり前のことなのだが……



ゼンはあの朝子の“何言ってんの?”という顔を見て少し…ほんの少しカチンときた


「ほぅ……なら描いてみろ」

『この腕の人に言います?まぁ、いいですけど……
じゃあ誰を描きますか?』

「よし、兄上だ」

「おいゼン!」

「まさかイザナ殿下を描かせるなんてね」


彼女が自称上手いだけなら相当まずいぞ!と顔が真っ青のミツヒデ


『あ、イザナ殿下ですか?
かっこいいよね〜イザナ殿下
ほんともう、キラキラしてる
何よりの魅力って、あの少し長めの綺麗な金髪だよね〜
あの綺麗な青い瞳とか白い肌とか……
声もかっこいいし、少しSっぽいところとか……』

とかなんとかいいながら、渡された鉛筆をスラスラとすべらせていく朝子


「わぉ」

見に来ていたオビもビックリしている



『あれ?なんで三人は私を見て驚かないんですか?』

「ん?容姿のことか?もう報告済みだからだ
それに、そんなに気にすることでもなかろう」


んー、そーかなぁ?と言っている頃にはもう出来上がっていた


『出来たー!』

「速っ!」

『…って、あー!失敗したァ………』

しゃがんで頭を抱える朝子


『書き直させて!美しさに欠けて…って、それ失敗作だってば!』


いつの間にか紙はゼンの手にあった


「…………」

『だから失敗作だって言ったのに〜』

「いや、上手いな」

「そっくりだね」

『へ?』






う、嘘でしょ…………


私の絵が、この世界の人達に認められたぁ!?







To be continue……




変な終わり方で申し訳ありません

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